小松美羽とエマニュエル・デュポンが語る風土と祈りのアート対談
2025年6月20日、スイス・バーゼルで開催された国際アートフェア「Art Basel Basel 2025」において、特別対談イベント「Sensing Burgundy: 芸術・文化・テロワールの詩的交差点」が盛況のうちに行われました。このイベントは、展覧会の中核セクション「xchange Circle」ステージにて催され、アーティスト小松美羽と建築家エマニュエル・デュポン、そして“GEN DE ART”編集長のオリビア・マツモトが対談の輪を織り成しました。
自然との対話を深める小松美羽
対談は、オリビアが進行役を務め、小松美羽の視点からスタートしました。彼女は自身の作品がもつ深い意味を語り、古代日本に根ざした信仰や自然霊性をテーマに、作品に込めた思いを語りました。会場では、小松の作品を紹介する映像が上映され、参加者たちはまるで神聖な儀式に招かれたかのような印象を受けました。
小松は、「自然の声を聴く」ことの重要性について質問を受け、「私は瞑想のような状態に入ることで、創作を行います。そのプロセス自体が私にとっての瞑想であり、そこに現れる景色が私の作品の基点です」と説明しました。また、筆の動きについては「特にリズムや繰り返しを意図しているわけではないですが、集中が極まると自然と同じ動きが生まれます。これが私の考える『サステナビリティ』です」と語り、芸術と自然の調和について深く考察しました。
さらに、エコロジーの危機についても言及し、近々始まる個展のテーマ「エゾオオカミ」に触れました。「エゾオオカミは人間によって絶滅させられた存在ですが、私は彼らの思いを代弁したい。彼らは私たちに『同じ過ちを繰り返すな』と警告しているのです」と語り、自然の精霊たちの存在を声にしました。最後に、小松は、彼女の作品がなぜ人々の心に響くのかについて「文化を越えた祈りが共通して存在するからではないでしょうか。それこそが、私たちの本質に触れる普遍的な言語なのです」と締めました。
建築と風土の哲学を語るエマニュエル・デュポン
小松と対をなす形で、エマニュエル・デュポンは、日本とフランス、特にブルゴーニュとの関係について考察しました。彼は「2025年は、ブルゴーニュのクリマが世界遺産に登録されて10年を迎える年です」と述べ、人と土地との再考を促しました。建築における記憶や風土の重要性について、彼は次のように深く語りました。「建築は、地形と文化の記憶を現代に翻訳するためのメディアです。私たちのプロジェクトは、土地、芸術、建築の共生を目指し、精神性を引き継ぐ役割を果たしています。」
風土を感じる貴重な対話
この特別対談では、一般的な質疑応答形式は取られず、深く穏やかなやりとりが繰り広げられました。小松とデュポン、それぞれの視点から風土と精神の交差点について語られ、参加者たちは文化や物質を超えた「感じる風土」の地図を共に描いていきました。
最後に、対談は明確な結論を持たず、柔らかな照明の中で締めくくられました。参加者たちの心に残った言葉は「私たちは皆、この土地の旅人にすぎない。残せるものがあるとすれば、それは記憶と共鳴だけである。」というメッセージでした。この対談は、今後のアートシーンにおいて重要な意味を持つものとなることでしょう。
本イベント情報
- - イベント名:Sensing Burgundy:芸術・文化・風土の詩的交差点
- - 日程:2025年6月20日
- - 会場:Art Basel Basel/Exchange Circle
- - 主催:GEN DE ART × Vosne-Romanée Culture & Arts Center
- - 登壇者:小松美羽(アーティスト)、エマニュエル・デュポン(建築家)