ベルギーの新星が描く、少女の静かな挑戦
映画『ジュリーは沈黙したままで』の公開が2025年10月3日(金)に決定しました。この作品は、2025年アカデミー賞国際長編映画賞にベルギー代表として選ばれた注目作であり、カンヌ批評家週間でのプレミア上映が予定されています。監督は若き才能、レオナルド・ヴァン・デイル氏。彼の長編デビュー作としても大きな期待が寄せられています。
物語の概要
本作の主人公は15歳のジュリー(演者:テッサ・ヴァン・デン・ブルック)で、彼女はベルギーのテニスクラブに所属する春を迎える少女です。実力を認められたジュリーは、奨学金を獲得し、これまで数多くの試合で勝利を収めてきました。しかし、ある日、信頼していたコーチ・ジェレミー(ローラン・カロン)が突然指導停止となり、彼の教え子であるアリーヌが自ら命を絶つという衝撃の事件が発生。この出来事から、彼女の周囲には不穏な噂が広がり始めます。
ジュリーは、ベルギー・テニス協会の選抜試験を控え、さらなるプレッシャーにさらされる中で、コーチに関する調査が行われます。当初は自身の心情を隠すかのように沈黙を貫くジュリー。彼女の沈黙には、決して弱さではなく、強い意志が潜んでいるのです。
映画のテーマ
本作は、スポーツ界における青少年の位置付けや、選手とコーチの関係性の危うさを鋭く描写しています。ヴァン・デイル監督は、子どもたちが「小さな大人」として扱われる現実に関して深い問題意識を持ち、その視点を通じて作品を創り上げています。
加えて、ダルデンヌ兄弟が共同プロデューサーとして名を連ねており、彼らの社会問題への関心が色濃く反映されています。また、テニス界のスーパースター・大坂なおみがエグゼクティブ・プロデューサーとして関与。大坂は自身の経験から、メンタルヘルスの重要性が描かれた本作に共感を示し、「ジュリーの声を通じて、多くの少女たちに責任を持った選択ができるようになるべきだ」と語っています。
圧倒的な映像美
本作の美しい映像は、著名な撮影監督ニコラス・カラカトサニスによって35mmと65mmフィルムで捉えられています。彼は自然光と固定カメラを駆使し、キャラクターの感情を際立たせ、観客に深い感動を与えます。また、音楽にはアメリカの現代クラシック作曲家キャロライン・ショウの緊張感のあるボーカルスコアが使用され、物語の緊迫感を一層引き立てています。
記憶に残る人間ドラマ
本作では、ジュリーの成長過程や心理が精緻に描かれています。彼女は自身の目標に向かって一生懸命にトレーニングし、仲間たちとの絆を育んでいきます。全ての登場人物がノンプロの俳優で構成され、実際のテニスクラブに通う仲間を起用することで、リアリティを追求しています。これにより、ジュリーや彼女の仲間たちが安心して演技に臨むことができ、観客にとっても印象深い体験となることでしょう。
監督からのメッセージ
ヴァン・デイル監督は、「ジュリーが沈黙する姿を見て、なぜ沈黙するのかを一緒に考えてほしい」というメッセージを発表しています。この映画を通じて、現代社会の情報が溢れる中で「沈黙」と向き合う意味や、その背後にある感情や思考について観客に問いかけています。
まとめ
『ジュリーは沈黙したままで』は、一人の少女の心に潜む葛藤と成長を描いた感動のドラマです。ダルデンヌ兄弟と大坂なおみが認めたこの作品を、ぜひ映画館で体験してみてはいかがでしょうか。