新刊『失われたバンクシー あの作品は、なぜ消えたのか』が発売へ
2025年8月下旬、株式会社青幻舎からジャーナリスト、ウィル・エルスワース=ジョーンズによる新著『失われたバンクシー あの作品は、なぜ消えたのか』が刊行されます。本書では、ストリートアート界で最もミステリアスなアーティスト、バンクシーが30年以上のキャリアで創出した数々の作品が、どのようにして消失したのか、その背景を深く掘り下げていきます。
作品が消える理由
バンクシーはイギリス・ブリストルを拠点に、世界中で数多くの作品を発表してきました。彼の作品は壁や車両、さらには街のあらゆる場所に残されていたものの、商業主義の影響やストリートアート特有の一過性により、現在では多くの作品が元の形で存在しません。本書では、彼の重要作品50点に焦点を当て、消失の理由や背景を探ります。
例えば、故郷で描かれた《ダイヤモンド・ガール》は消失し、オーナーが随分悩まされた《馬小屋の模型》は80万ポンドで落札されるなど、名声による逆説的な運命が語られます。このような事例を通じて、バンクシーの作品がどのようにして除去され、消えていったのかに迫るのです。
消失する作品の驚くべきエピソード
1. 消えるダイヤモンド
アメリカ・デトロイトで描かれた《ダイヤモンド・ガール》は、ファンがそれを購入するのを防ぐための措置として撤去され、その後行方不明になったと言われています。流通市場の影響を受けやすいストリートアートの宿命を表す興味深いエピソードです。
2. 80万ポンドの馬小屋
バンクシーが手掛けた模型の馬小屋は、コロナ禍による観光業の窮状を救ったものの、その価値が評価されすぎたおかげでオークションにかけられ、高額で取引されました。
3. 木の外科手術
ロンドンのホーンジー・ロードに描かれた作品は、アクリルガラスによって視界が遮られ、本来の魅力が失われてしまいました。このように、保存目的での措置が逆に作品の魅力を封じ込めてしまっているという皮肉があります。
4. 移民の子ども
ヴェネチアの運河に描かれた《移民の子ども》は、自然環境の影響で徐々に姿を消しつつあります。この作品に関しては修復すべきか、それとも自然に消えるのを待つべきかという論争が巻き起こっています。地元銀行が保存を支援しようと動き出しているといいます。
専門家による監修
本書の翻訳監修には、社会学者の毛利嘉孝氏が関わっています。彼はバンクシーの初期活動からの評論を行っており、彼の洞察が本書に深みを持たせています。バンクシー芸術の風貌や金銭的価値、ストリートアートの一過性といったテーマが、読者に新たな視点を提供します。
まとめ
『失われたバンクシー あの作品は、なぜ消えたのか』は、ストリートアートの持つ矛盾や魅力を丁寧に描いた一冊です。バンクシーの作品の運命を追うことで、思わず考えさせられる内容となっています。この新刊は、美術や文化に関心のある人々にとって、見逃せない一冊となることでしょう。