市川沙央の『ハンチバック』がフランス名誉賞最終候補に
新たな波を呼び起こす文学作品が登場しました。市川沙央著の『ハンチバック』が、2023年に第169回芥川龍之介賞を受賞したことに続き、フランスの権威ある文学賞「メディシス賞」の外国小説部門に最終候補として名を連ねました。これは、日本文学が国際的な舞台で注目を集める大きな一歩です。
『ハンチバック』について
『ハンチバック』は、主人公井沢釈華が重度の障害を持つ中で、自身の心の葛藤を描いた力強い作品です。釈華は、過酷な身体的状況にも関わらず、有名私立大学の通信課程で学びながら、自らの声を発信していきます。彼女のすべての収入を寄付し、さらに18禁TL小説を投稿することで、読者とのつながりを深めていく様子は、現代社会における多様性や個々の生き様を反映しています。この作品はただの小説を超え、障害者の視点から生きることの意味を問うメッセージ性を持っています。
海外での反響
『ハンチバック』の反響は、日本国内にとどまらず、世界各国に広がっています。現在、世界25カ国以上で翻訳版が出版されており、特に英訳版は2025年の全米図書賞「翻訳文学部門」のロングリストに選ばれるという栄誉を手にしました。このような国際的な評価は、読書バリアフリーの重要性を再認識させる契機にもなっています。
フランス語版の訳を担当したのはパトリック・オノレ氏。このメディシス賞の受賞作品は、2023年11月5日に発表される予定で、どのような結末が待っているのか、多くの読者が注目しています。
メディシス賞とは
メディシス賞は1958年に創設され、フランス文学界で広く知られる権威ある賞の一つです。1970年から設けられた外国小説部門では、名だたる作家たちの作品が受賞してきました。中でも、ミラン・クンデラやウンベルト・エーコといったノーベル賞受賞者の作品も含まれており、そのレベルの高さは保証されています。しかし、これまで日本作品がこの栄誉を受けたことはありませんでした。
今後の展望
市川沙央の『ハンチバック』は、11月に発表されるメディシス賞の行方とともに、さらなる注目を集めることになるでしょう。作品自体も、文春文庫版が10月7日に刊行された際に、ルビを大幅に追加し、読みやすさが向上しました。さらに、多くの人々にその内容を広めるため、冒頭8000字が無料公開されています。これを機に、より多くの読者がこの力強い物語に触れ、その意義を感じてくれることを期待しています。
市川沙央のプロフィール
市川沙央は1979年生まれで、早稲田大学卒業。筋疾患先天性ミオパチーによる症候性側彎症や人工呼吸器使用・電動車椅子を生活の一部として抱えています。
2023年には『ハンチバック』で新人賞を受賞し、同作で芥川賞も受賞するなど、その才能が広く認識されています。最新作の『女の子の背骨』は2025年に刊行予定で、ますますの活躍が楽しみです。