新進気鋭の作家が描くファヴェーラの日常
ブラジル・リオデジャネイロのファヴェーラと呼ばれるスラム街で育ったジョヴァーニ・マルチンスのデビュー作『太陽に撃ち抜かれて』が、2026年1月22日に刊行される。この小説は、彼が育った過酷な現実を鋭く描き出しており、すでに世界中で注目を集めている。
ファヴェーラの息づかい
ファヴェーラは、日々マフィアと警察との抗争が繰り広げられ、厳しい治安状況に置かれた地域である。そのなかで暮らす人々の生活がどれほど厳しいものであるか、マルチンスは作品を通じて語りかけている。彼の作品には、さまざまな麻薬中毒者や治安の悪化に苦しむ人々の様子がリアルに描かれており、まさに目撃者としての視点が感じられる。
「パドリ・ミゲル駅」と題された一節では、吸引する大麻の質の悪さや、吸い続けることの是非について考える主人公の心情が描かれている。そこから見える人生の苦悩や生きる意味は、多くの読者の心をつかむのだろう。
新たな現実主義
マルチンスはリオ南部のファヴェーラで育ち、10代から様々な仕事をこなして生計を立てていた。2018年に彼のデビュー作『O Sol na cabeça』が発表されると、その短い物語13編は瞬く間に話題となり、「今世紀最高のブラジル文学」とも称されるまでに。現代の若者たちの生々しい声を巧みに表現することで、他の作家とは一線を画す作風を確立している。
この作品は、すでに10カ国で翻訳され、英語版は多くの著名な媒体から高い評価を受けている。特に著名な作家やミュージシャンたちからの支持も厚く、その言葉には「ぶっ飛ばされた」との感想が寄せられている。
心の中に潜む声
物語の中には、マルチンスが自身の体験から引き出した生の声が満載だ。例えば、主人公がリュックに手を入れ、お金を渡すシーンでは、ファヴェーラ独特の緊張感とそれに伴う不安が伝わってくる。召し上がることができないような重圧の中でも、子どもたちが生きるためにどうにかして前に進もうとする姿が浮かび上がる。
624ページにもわたるこの作品は、読み応えのある一冊であると同時に、ファヴェーラの人々の日常をリアルに表現する力強いメッセージが込められている。マルチンスの作品を通じて、読者はブラジルの貧困や文化の複雑さに触れることができるだろう。
絶え間ない賛辞
評判の高さは、出版前からも明らかであり、世界中の新聞や雑誌がこの作品を絶賛している。アイリッシュ・タイムズは、「映画『シティ・オブ・ゴッド』以後の最も重要な想像力」と表現し、イギリスのガーディアンは「人生とはこんなにも容易く狂ってしまう」と警鐘を鳴らしている。さらに、アメリカのカーカス・レビューは、着実にタフで優しさを持った文体がファヴェーラの生活を描いていると称賛し、ブラジルの大作家ローザに匹敵する美しさを持つと述べている。
未来の文学を担う存在
今後、彼の作品はさらに広がりを見せることが確実視されており、『太陽に撃ち抜かれて』はその第一歩とも言える存在感を放っている。進化し続けるブラジル文学の中で、彼がどのような新たな表現を生み出すのか、非常に楽しみである。興味を持った読者は、ぜひ手に取ってその世界観を味わってほしい。
著者のジョヴァーニ・マルチンスは、1991年に生まれ、リオデジャネイロのロシーニャで育った。彼の背景には、多様な人々との触れ合いがあり、その中での体験が彼の作品に色濃く反映されている。本書では、彼の才能がどのように開花したのか、そしてファヴェーラ特有の表現をどのように更新しているのかを感じ取ることができる。彼の作品が、今後のブラジル文学に与える影響は計り知れないだろう。