ANRI人文奨学金による新たな未来づくり
ANRI株式会社が開催した『ANRI人文奨学金:未来を考える人文フェローシップ』がこの度、第1期生の選考を終えました。選ばれた10名の若手研究者は、各々が独自のアプローチで未来の人文科学研究に挑戦する意欲に溢れています。
ANRIの背景と奨学金の意義
東京都港区に拠点を置くANRIは、スタートアップ企業への投資を通じて「圧倒的未来」というミッションの実現に取り組んでいます。これまでテクノロジーや自然科学への支援が中心でしたが、急速な技術革新の影響を考える中で人文系研究の重要性を痛感し、新たにこの奨学金を設立しました。人間や社会、思想への深い洞察を通じて、テクノロジーの進化に伴う倫理や社会的影響を見つめ直すことが求められています。
奨学金概要
『ANRI人文奨学金』は、最大10名の若手研究者に対し、一人あたり50万円の助成金を支給するプログラムです。この支援は研究活動のために幅広く使えるもので、領収書も不要です。選考にあたっては282件の応募があり、その中から独自性や社会的意義を重視して選考が行われました。
採択された研究者の紹介
大野 瑞記
南山大学の大野氏は、戦争倫理に関する研究を行っており、戦場の兵士が直面する倫理的経験に基づいて戦争と倫理の関係を再考します。彼はこの奨学金を通じて、より実状に即した哲学的アプローチを深めることを目指しています。
岡本 隣
東京大学の岡本氏は、性ホルモン研究の歴史を探求し、ジェンダーバイアスの是正を図ることを目指しています。彼女の研究は、日本における科学の文脈を再評価することで、新たな知識の創出に貢献します。
呉 文慧
神戸大学の呉氏は、特別支援教育と「サイボーグ的主体」に焦点を当て、その新たな在り方を探究しています。彼女は教育の可能性を広げることを目指しています。
佐々木 玲菜
ジョンズ・ホプキンス大学の佐々木氏は、中国における台湾問題について研究します。世論の影響を探りながら、安全保障の観点からの理解を深めようとしています。
高橋 沙也葉
デューク大学の高橋氏は、公共彫刻を通じて芸術と社会の関係を歴史的に考察。社会における芸術の役割を再確認することを目指しています。
深谷 拓未
京都大学の深谷氏は、「味覚が社会を創る」とのテーマで、ワイン銘醸地を事例に挙げて社会文化的視点から研究に取り組みます。
藤 杏子
立教大学の藤氏は、ボクシングジムにおける相互作用を分析します。趣味を通じてのコミュニケーションの重要性を探ります。
別當 奏
関西学院大学の別當氏は、20世紀の日本文学と科学の交差点を見つめ、安部公房の作品における科学受容を研究しています。
李 慕遥
大阪大学の李氏は、感染症と文学の関係に焦点を当て、芥川龍之介の文学を通じて社会的問題を浮き彫りにします。
渡辺 理子
早稲田大学の渡辺氏は、ASEANの国際関係を調査し、人文社会系の見地からその複雑性を探究します。
未来への期待
ANRIが選考した10名の研究者は、いずれも独自の視点と社会的影響を持つ研究に取り組んでいます。今後、彼らの研究成果が新たな知の創出や社会的理解を促すことへの期待が高まります。人文分野の重要性を改めて見つめ直し、次世代のますます進化する未来に貢献していくことが求められる時代にあって、この奨学金はその一助となることでしょう。