地方の小規模事業者が挑むAI活用と「商助」の展望
2025年4月10日、滋賀県大津市を拠点とする杖専門店「近江一文字」を運営する株式会社ゴールドクローバーの代表取締役・林知史氏が新たな挑戦を行いました。彼の手により、地方の小規模事業者が抱える社会的課題に向き合う実践例をまとめた電子書籍が公開され、瞬く間にベストセラー1位に輝きました。その本のタイトルは「ヒーローズジャーニー・神話の法則」をテーマにしたもので、同時に新しいビジネス概念である「商助」を提唱しています。
「商助」とは何か
「商助」という言葉は、これまでの「自助・共助・公助・互助」といった概念に続く新種の考え方です。林氏によれば、「商売とは本来、社会の課題を解決することで成り立つもの」とのこと。特に地方の小規模事業者は、地域社会と密接に関わりながら事業を営んでおり、小さな店舗でも地域の問題に真摯に向き合うことで、持続可能な運営が可能になると彼は信じています。
1本の杖から始まった物語
林氏は開店初年度にわずか1本の杖しか売れず、廃業も考えた心境を振り返ります。かつて百貨店で鮮魚バイヤーとしての経験を積んだ彼は「近江一文字」の設立に臨みましたが、「ヒーローズジャーニー」という物語構造の出会いが運命を変えました。お客様を物語の主人公と捉え、彼らの悩みやニーズに寄り添った情報発信を行うことで、次第に売上も上がるようになっていきました。
被支援者の目線で向き合うことで、杖はただの道具ではなく、ワンストップのパートナーとしての役割を果たすことを見出したのです。「杖を必要とするお客様と、真摯に向き合うことで、私の店舗は全国的なスケールで支持されるようになった」と語ります。
小規模事業者の強み
「大企業にはない、小さな店舗ならではの強みがある」と林は強調します。経済的に「弱者」に位置する小規模事業者だからこそ、顧客の個別ニーズに細やかに応え、自身の体験をもとに、新しい技術を生かす方法を模索することが可能です。彼は、自らの経験を通じて、同様の状況に苦しむ事業者たちに希望を与えることを望んでいます。
この考えから生まれたのが、AIとの協働による電子書籍の執筆です。林氏は自らの経験をAIツール「Claude」に伝え、対話を通じて知識や表現力を補った結果、専門的な冊子を出版しました。「私たちのような小規模事業者がAIを活用できる時代が来たことに驚いています」と感じています。
「商助」の理念を広めたい
今後、林氏は「商助」の考えをさらに広めて、社会の支援につなげたいと考えています。「初年度1本の売上から、物語の力とウェブの活用、さらにはAIの技術まで取り入れています。困難に直面している方々に、新しい視点を持つ勇気を持ってもらえれば」と願っています。
書籍には失敗談や挫折を含め、実際に克服する方法を物語として体験できるような構成がされています。同じ「弱者」として、地方事業者への応援メッセージも込められています。「大企業の真似をするのではなく、私たちの強みを生かす方法があります」との彼の言葉は、希望の光を投げかけています。
新たな物語の始まり
「経済的にも情報的にも言われる『弱者』だからこそ、本質的な価値を提供できる可能性がある」と林は信じています。杖やお墓といった人生の重要な瞬間に寄り添っていく行動を通じて、地域に根差した事業を続け、AI技術を取り入れながら新たな挑戦を続けていく考えです。
「私の経験が、誰かの支えになればそれが最大の喜びです。今後は小規模事業者や中小企業の支援に関わる出版代行業にも挑戦していくつもりです」と語る林氏の言葉が、今後の活躍に期待を寄せています。1本の杖から始まった新しい物語はまだ進行中であり、その行く先に希望があります。