戦争の記憶を心に刻むノンフィクション絵本
2025年7月2日(水)、株式会社福音館書店より、戦争の苦い記憶と平和への願いを込めたノンフィクション絵本『一郎くんの写真-日章旗の持ち主をさがして』が出版されます。この本は、太平洋戦争でアメリカに渡った寄せ書き入りの日章旗の持ち主を、新聞記者たちが捜索する姿を描いた感動的な物語です。著者は木原育子さん、絵は沢野ひとしさんが担当しています。
日章旗の発見と探し求める旅
物語は2014年に遡ります。「一郎君へ」と書かれた寄せ書き入りの日章旗がアメリカで見つかります。この日章旗には、59名の署名があり、多くが静岡県に由来のある名字です。記事は、中日新聞浜松支局がその持ち主を探す依頼を受けたことから始まります。記者たちは静岡の町を駆け巡りながら、「一郎くん」とは誰なのかを明らかにしようと努力します。
彼らは古い電話帳を手に、一人一人の家を訪ねることで、人々の記憶や証言を掘り起こしていきます。やがてある証言がヒントとなり、「一郎くん」の正体が判明。さらに、彼の母親の思いにも触れることになります。
戦後80年、平和を考える機会として
この作品は、2014年に「さまよう日章旗」として中日新聞に連載された記事を基にしています。この絵本を通じて、戦争と平和について思いを馳せる機会が広がることを願っています。戦後80年という節目の年に、改めてこのようなテーマに触れることは非常に意義深いです。絵本版は、月刊誌「たくさんのふしぎ」の2019年9月号としても発表されたものです。
著者とイラストレーターのプロフィール
木原育子(著者)
愛知県一宮市生まれの木原育子さんは、名古屋大学大学院国際言語文化研究科を卒業後、中日新聞社に入社。特別報道部でさまざまな社会問題を取材し、福祉ジャーナリズムを中心に活動しています。これまで、アイヌ民族を巡る差別問題に関する取材でメディア・アンビシャス大賞を受賞するなど、その実績は多岐にわたります。
沢野ひとし(絵師)
名古屋市出身の沢野ひとしさんは独立したイラストレーターで、児童書の表紙や本文イラストを多数手掛けてきました。第22回講談社出版文化賞さしえ賞を受賞するなど、注目を集めています。
朗読会やトークイベントの開催
新刊の刊行を記念して、書店でのトークイベントも計画されています。ジュンク堂書店池袋本店では、2025年7月24日(木)に著者の木原育子さんと担当編集者のトークが行われる予定です。また、代官山蔦屋書店では、2025年9月11日(木)にフリーアナウンサー・堀井美香さんによる絵本の朗読会とトークイベントも開催されます。
この絵本を手に取って、戦争と平和について考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。