株高不況の真相を解明
現在、日本の株式市場は活況を呈しています。コロナウイルスの影響が薄れた後、日経平均株価は3〜4万円という高値を維持し、一時はバブル期の最高値を上回る状況となっています。しかし、その一方で多くの庶民はその恩恵を全く感じられないという現実があります。この現象を「株高不況」と呼ぶことができます。
この現象について、著者藤代宏一氏が新著『株高不況』で深く掘り下げています。彼の分析によると、現在なぜ株価が好調であるにもかかわらず、生活が厳しいと感じる人が多いのか、その理由を以下のように説明しています。
景気回復の実感に乏しい株高
日本経済は回復基調にあるとされていますが、実感としての景気回復は多くの人々に届いていません。一方で、企業の利益は上昇しているため、株価が高騰しているわけですが、この利益が労働者の賃金として還元されていないのが実情です。
円安がもたらしたもの
また、円安も大きな要因です。円の価値が下がることで輸入品の価格が上昇し、結果として物価が高くなります。これが庶民の生活を圧迫し、更にはその影響で消費が控えられる悪循環が生まれています。
異次元緩和とはなんだったのか
もう一つの重要なポイントは、日本銀行の金融政策です。異次元の金融緩和が続く中で、金利は低水準に抑えられていますが、これは必ずしも良い結果を生んでいるわけではありません。企業側が資金調達しやすくなっている一方で、一般家庭へのリターンは限定的です。
賃金、物価、金融政策、金利、株価は全てつながっている
著者は、これらの要素がどのように交じり合っているのかを解説しています。特に賃金の低い日本では、労働者が受け取る手当が不足しており、物価が上昇する中で生活は厳しさを増しています。
物価上昇の実感とのズレ
このような状況下で多くの人々が感じているのは、賃金が増えないにも関わらず物価だけが上がるという現実です。物価上昇の実感と、実際に生活が楽になる感覚との間に大きなズレが生じていると言えます。
ステルス値上げの影響
さらに、著書には「ステルス値上げ」という現象も取り上げられています。商品やサービスの価格はそのままでも、内容量が減少することで実質的な値上げが行われていることが多く、これによって庶民の負担は増しています。
日本企業の稼ぐ力復活と労働分配率の問題
しかしながら、藤代氏は日本企業が稼ぐ力を取り戻していると指摘しています。企業の利益が上昇する中で、なぜ労働者への分配がなされないのか、これは今後の大きなテーマであるとしています。特に、大企業の低い労働分配率が問題視されています。
結論
『株高不況』では、こうした現状を踏まえて、生活者がどのように対応すべきか、その手立ても考察されています。未来に向けて、経済が好転することを切に願うばかりです。今後、経済政策がどう位置づけられていくか、ぜひ注目してみてください。
著者プロフィール
藤代宏一氏は、第一生命経済研究所の主席エコノミストとしてさまざまなメディアを通じて情報発信を行っています。また、彼は経済や政策に関する豊かな知識と経験を持っており、これからの日本経済を考える上で欠かせない存在です。