海の上で特別授業を実施
2025年6月11日、一般社団法人日本昔ばなし協会と日本財団が共同で実施した「海ノ民話のまちプロジェクト」が、函館市立高丘小学校の海洋STEAM教育を支援しました。この取り組みでは、同校の6年生54名が参加し、津軽海峡フェリーの船内で初めての海洋STEAM教育が展開されました。
この授業は、修学旅行の一環として計画され、函館から青森へ向かうフェリーの船上で行われました。海洋STEAM教育においては、海の重要性を次世代へ伝えることが目的であり、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環としても位置付けられています。
海ノ民話アニメーションで地域の海を学ぶ
「海ノ民話のまちプロジェクト」の核である民話のアニメーション制作は、日本各地に残る海に関する物語を映像化するにあたり、地域の海の魅力や大切さを伝えることを目的としています。授業に参加した子どもたちは、まず海が見えるデッキに出て函館の風景に別れを告げ、その後、「函館の海を知ろう」と題した特別授業が始まりました。
具体的には、昨年度制作の「ムイとアワビの合戦」をアニメーションで視聴し、その後の解説では、ムイ(オオバンヒザラガイ)やアワビの生態、津軽海峡の特性について詳しい説明がなされました。海流の影響で多様な海洋生物が集まる函館の特徴も取り上げられ、地域の水産資源の豊かさが理解されました。
昔からの水産資源と現代の環境問題
函館では、真昆布が重要な水産物の一つであることも解説され、江戸時代から続くその名声と、現代での消費状況についても触れました。また、授業では津軽海峡の歴史やその輸送の重要性も学び、縄文時代の航海文化にまで遡る豊かな歴史が紹介されました。
後半の授業では、海洋プラスチック問題や水温上昇の影響についても議論され、函館における魚の変化について子どもたちに現実を知らせました。特に、ごみの問題が2050年までに深刻化する可能性についても警告が発され、現在の取り組みについても触れられました。子どもたちは、自分たちにもできることがあると学び、問題意識が芽生えました。
自由な発想で未来の海を描く
授業の最後には、「未来の函館の海」をテーマにした絵画ワークショップが行われ、子どもたちがそれぞれの思いを絵に表現しました。完成した作品は函館市内の観光施設で展示される予定です。さらに、青森の民話を題材にしたアニメーションや、地域の水中写真展示も行われ、参加した子どもたちからは好評の声があがりました。
今回の特別授業を受けた児童たちは、海に関する知識を深め、さまざまな視点から地域の文化や環境問題について考える貴重な体験をしました。日本昔ばなし協会は、今後も地域と連携し、海と民話を通じた教育や文化の継承を進めていく決意を固めています。