平和を願う純白の花火「白菊」
2025年7月28日、株式会社河出書房新社から、山崎まゆみによる新著『鎮魂の花火「白菊」 長岡の花火がつなぐシベリアと真珠湾』が刊行されます。これは、日本の伝説の花火師、嘉瀬誠次が打ち上げた「白菊」にまつわる感動的な物語です。この作品は、戦後80年という節目に、彼の平和への思いを再確認させてくれる一冊となることでしょう。
嘉瀬誠次の生い立ちと背景
嘉瀬誠次は、1922年に長岡の花火師の家に生まれました。彼は徴兵され、戦争とシベリア抑留という苦難の日々を体験します。シベリアでは、多くの戦友が命を落とす中で、現地住民の優しさに触れ、心の中で大きな葛藤を抱えることとなります。そのような経験から、帰国後は「花火師」としての使命感を持つようになり、戦友たちに対する鎮魂を花火という形で表現することを決意します。
「白菊」の誕生とその意義
1984年、嘉瀬はロサンゼルスオリンピックの閉会式での花火の打ち上げを成功させ、その名を広めました。しかし、本当の夢は1990年に実現しました。それは、アムール川で亡き仲間たちに捧げるための「白菊」を打ち上げることです。この花火は、ペレストロイカによる政情の不安定さの中で、NHK新潟や地元自治体、民間企業などの協力を得て実現されました。
「白菊」は、ただの花火ではありません。これは嘉瀬の戦友たちへの鎮魂の思いを形にしたもので、現地の人々に深く感動を与えました。また、日本とロシアの新たな交流の架け橋ともなり、国境を越えた友情の証を示しました。
未来に向けたメッセージ
2015年には、戦後70年の節目に「白菊」が真珠湾でも打ち上げられ、市民たちが戦没者を慰霊し、世界平和を願うメッセージを発信しました。このように、嘉瀬の花火は時代を超え、多くの人々の心に訴えかけ続けています。
今年の8月、再び長岡花火での「白菊」が打ち上げられ、嘉瀬誠次の平和を願う心が、未来に向けて受け継がれていくことでしょう。このノンフィクションは、花火を通じた鎮魂と祈りの物語であり、平和を願った一人の職人の証でもあるのです。
まとめ
本書を通じて、読者は嘉瀬誠次の特別な人生と、彼の打ち上げた花火に込められた思いをじっくりと感じ取ることができるでしょう。正に、平和を願う花火の記録です。