官民協働による公共DXの新潮流
一般社団法人自治体DX推進協議会(GDX)は、自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するために、『自治体DXガイド Vol.8』を発行しました。本号の特集テーマは「官民協働、次のステージへ 公共DXの新潮流」です。このテーマは、自治体が民間の知見や技術をどのように活用していくかに焦点を当てています。
近年、自治体のデジタル化は急速に進む中で、民間企業との連携の在り方が従来の「委託して終わり」にとどまらず、より深い協働の段階へと進化しています。この進化の中で、自治体は主導権を持つ一方で、民間企業が持つスピード感や専門知識を活用しながら複雑な地域課題に対処し、持続可能な行政サービスを実現するモデルが求められています。
GDXのガイドでは、数々の官民協働の成功事例が紹介されています。例えば、デジタル庁が進める調達改革についての最新動向や、先進的な自治体が実施する実証実験フィールドの構築、さらには地域経済の循環を図る官民出資型公社モデルなどが挙げられています。特に注目されるのは、現場主導の業務改善や地域人材の活用に基づく協働です。
デジタル庁のDMP
特集の中には、デジタル庁が推進する「デジタルマーケットプレイス(DMP)」に関する具体的な取り組みが掲載されています。DMPは、行政のIT調達における長年の課題を解決するために設けられたプラットフォームで、特にSaaSに特化した機能を持ち、調達の迅速化を目指しています。このプラットフォームのリリースから1年で、登録事業者数は300社を超え、その約80%が中小企業やスタートアップです。これにより、より多様なベンダーが市場に参入しやすくなっています。
内製化の推進
また、古谷豪氏が提案する現場職員による内製化の重要性も取り上げられています。Claris International社が提供するローコード開発プラットフォーム「Claris FileMaker」を使用することで、大規模な投資や専門知識がなくても現場職員自らがアプリを構築し、省力化を図ることが可能です。広島市では既にこの手法を利用し、業務の効率化を実現しています。このような小さな成功体験が蓄積されていくことで、持続可能な自治体DXが加速していくでしょう。
横瀬町の挑戦
埼玉県横瀬町においては、官民連携プラットフォーム『よこらぼ』が注目されています。ここでは、「企業誘致」から「事業誘致」という発想の転換が行われ、民間の「やりたい」という想いを基にし、迅速な支援を実施しています。この取り組みは、多様なアイデアを受け入れ、町全体を実証フィールドとして活用するユニークな方法で、新たなチャレンジを促しています。
稼げる地域の実現
また、茨城県境町では「地域公社モデル」が成功を収めています。このモデルは、町と民間が50%ずつ出資し、官民連携で事業を進めるものです。地域が「稼ぐ力」を内製化し持続可能な地域社会の実現を目指しています。BIPROGY株式会社の竹内良輔氏によると、地域が自ら稼げる力を持つことが、持続可能な社会に不可欠であるとされています。
広島県の挑戦
広島県が展開する「ひろしまサンドボックス」も注目されます。この事業では、実証フィールドを自治体全体に提供し、「失敗のリスク」を行政側で負担することで、官民学が共創できる環境を築いています。これにより、新たな技術やサービスが日々生まれ、数々の実証プロジェクトが実用化されています。
地域のワーク力の活用
さらに、Matchbox Technologiesが提案する「自治体マッチボックス」は、人手不足に悩む多くの地域事業者に新たな労働力を提供するサービスです。このプロジェクトは、地域住民の潜在能力を引き出し、地域内での労働力循環を目指しています。
このように、『自治体DXガイド Vol.8』では、官民協働による新たな公共DXの取り組みが多岐にわたって紹介されており、今後の地域社会の発展に向けた貴重な情報源となることでしょう。自治体DXの推進において、GDXがさらに重要な役割を果たすことが期待されています。