テレビ界の凋落、その深刻な実態とは
フジテレビの問題が表面化する中、テレビ業界全体が直面している困難な状況について考えてみたい。著者の今道琢也氏が新潮新書で発表した『テレビが終わる日』は、そんなメディアの変遷をデータで分析し、視聴者の変化を浮き彫りにしている。
かつてテレビは、国民の生活において欠かせない存在だった。その影響力は圧倒的で、多くの人々がテレビから情報を得ていた。しかし、今や「オワコン」と言われるように、テレビ視聴のトレンドは大きく変わった。最近のデータでは、特に若い世代の視聴時間が半減している状況が浮き彫りになっている。
若者のテレビ離れ
具体的には、2012年から2023年にかけて、10代と20代の視聴時間が著しく減少した。この変化は実に衝撃的で、21年と22年の調査によると、なんと10代の20%、20代の30%がテレビに一切触れないという結果が出ている。リアルタイム視聴はもちろん、録画やインターネットでの視聴すら行っていないというのだ。
この傾向により、テレビ業界は今後難しい状況に陥ると言える。現在テレビを支えている主要な視聴層は60代以上。その結果、若年層が減少し続けることで、視聴者の総数も減り続ける構図が明らかになる。
対応が難しいテレビ局
新潮新書は、広告収入の減少も指摘している。ネットに比較してテレビ広告の収入は約半分になり、経営への打撃は避けられない。それに伴い、テレビ局の放送内容の質も落ちていると感じる人が多くなった。特に、視聴者からはやらせや捏造といった不祥事が続発し、これによりテレビへの信頼がますます薄れてきている。
こうした事態を受けて、クリエイターたちは新たなコンテンツを生み出すために、インターネットへのシフトを進めざるを得なくなっている。結果として、視聴者がネット動画に移行するのは当然の流れとなっている。
時代の変化に逆らえない
様々な要因が複雑に絡み合い、テレビが今後も黄金時代に戻るのは難しいと著者は分析している。その中でも特に顕著なのは、個人の嗜好に合ったディープな内容を提供するネットコンテンツの台頭だ。視聴者はますますパーソナル化を求めており、テレビはその流れに逆らえない状況にある。
就職人気ランキングにおいても、テレビ局は100位以内から姿を消し、多くの学生がテレビ界への興味を失っている。このように、収入の減少や信頼性の低下が続く中で、テレビ業界は未来を見出すことができるのだろうか。
まとめ
『テレビが終わる日』で語られる内容は、テレビに関心のある全ての人にとって貴重なデータと知見を提供している。今後のメディア業界におけるテレビの位置づけや存在意義が問われているが、果たして業界はどのように変化していくのだろうか。私たちもこの変化を見逃さず、今後のテレビの行方に注目していきたい。