中学生の少女と盲ろうの青年が描く友情と理解の物語

中学生と盲ろうの青年が描く成長の旅

2025年10月20日、株式会社ポプラ社は梨屋アリエの新作小説『真昼にも星が光ると知ったのは』を発売します。本書は、障害を抱える子どもたちとの関わり方や、友情の本質を深く掘り下げた作品です。著者は、前作『きみの存在を意識する』で高く評価された経歴を持ち、社会福祉士としての経験を生かしながら、見えにくい困難を抱える人々との交流を描いています。

この物語の主人公、夏鈴は中学二年生。彼女は、駅前で白杖をついた青年を見かけ、興味を持つものの、障害への理解が乏しく、彼に対して誤解や偏見を抱いてしまいます。しかし彼女は、彼との交流を通じて、自分の無知を認識し、見えない世界を理解していく過程を描いています。夏鈴が友人たちと参加する盲ろう者の学習会では、彼女が直面する「障害がある人との対等な友情とは何か」というテーマが展開され、深い考察を促します。

知識がもたらす変化

物語では、障害についての無理解から生まれる偏見や誤解が克服され、登場人物たちが成長していく姿が描かれています。特に夏鈴は、自身の元々持っていた偏見に気付き、障害者との向き合い方を学ぶことで、何が「対等な友情」となるのかを模索します。本書は、単なる友情の物語だけでなく、障害を持つ人々への理解を深める重要なメッセージも内包しています。

ラストへの感動の設定

また、『真昼にも星が光ると知ったのは』というタイトルは、皮肉な意味を持ちます。日中でも星は光っているというメタファーが、「知ろうとしなければ見えない」世界の存在を象徴しているのです。物語の最終局面で夏鈴が自ら詠む短歌に続くクライマックスは、読者に深い感動を与え、彼女の成長を実感させます。

盲ろう者とのコミュニケーション

さらに、著者は盲ろう者とのコミュニケーション方法についても触れています。触手話や指点字といった手法が、物語内で明確に説明されており、実際の学習会への参加を通じて体験することで、読者も新たな知識を得ることができます。巻頭に点字表、巻末には指文字や指点字表が付属されており、教育的要素も含まれています。

さまざまな世代に向けた一冊

本作は、障害についての理解を促進させ、特に中高生や大人にとっての大切な学びの機会を提供します。障害がある人々との交流を通じて、夏鈴がどのように自らを成長させ、友情を築いていくのか。これからの時代に必要な視点を提供するこの小説は、幅広い層の読者に是非手に取ってほしい一冊です。『真昼にも星が光ると知ったのは』は、友情や理解の大切さを再認識させてくれる作品です。