ビジネスケアラーへの支援に課題を抱える企業の実態
株式会社月刊総務が実施した「両立支援に関するアンケート調査」によると、全国の企業の約70%が「ビジネスケアラー」への支援に対して何らかの課題を抱えていることがわかりました。ビジネスケアラーとは、働きながら家族の介護を行う人々を指し、増加する高齢化社会を背景にその重要性がますます高まっていますが、現在の労働環境では無視できない問題となっています。
この調査には148社が回答し、数多くの貴重なデータが集まりました。
調査結果の概要
1.
支援への課題意識
質問に対して「とてもある」が24.3%、「ややある」が45.3%と、全体で69.6%の企業が支援に対する課題を実感しています。具体的には、育児に比べ介護に関する情報やサポートが圧倒的に少なく、企業ごとに必要な支援が異なるために柔軟かつ創造的なアプローチが求められています。
2.
育児と介護の休業実態
アンケートによれば、育児を理由に休職した女性社員は35.8%、介護を理由に休職した女性社員は24.3%と報告されており、育児と介護における支援の必要性が浮き彫りになっています。特に女性の多くが育児休業を利用しにくいと感じた旨の回答が寄せられました。
3.
導入されている支援制度
ほとんどの企業が「育児休業制度」を導入しており、次に「介護休業制度」が続いています。一方で、両立支援制度の利用状況を見てみると、男女の差は徐々に小さくなってきているものの、依然として育児における女性の利用率が高いとの結果になりました。
4.
両立支援制度の推進状況
両立支援の自社評価では、育児について68.9%が「推進されている」と回答する一方、介護に関してはわずか50%にとどまっており、今後の課題が明確です。
5.
情報不足と企業文化の問題
調査によると、社員の介護に関する把握状況が十分であると回答した企業はわずか6.1%に過ぎません。大半の企業が社員の状況を把握できておらず、サポート体制が機能していない現状が明らかにされています。
今後の展望
2025年に控える改正法に向けて、育児や介護に関する制度の整備が急務です。特にテレワークのような柔軟な働き方を提供する準備が必要とされ、企業の体制が整っていない状況が浮かび上がっています。
両立支援は企業文化の変革を促進する要因にもなりうるため、デジタル化の波や働き方改革の流れに乗りながら、必要な制度を設計していくことが重要です。
総務の役割
今回の調査結果を受けて、総務部門は現場の声を拾い上げ、制度の設計や推進、改善に積極的に関与する必要があります。両立支援は個人のライフイベントにとどまらず、企業の持続的な成長に直結するものであると認識されるべきです。
株式会社月刊総務の豊田健一代表も、「企業は従業員のライフスタイルを支えることが、結果的に競争力の強化につながる」と強調しています。両立支援は単なる制度の整備ではなく、働きやすい環境づくりが求められています。
共働き世代が増える中で、企業が育児と介護をどうサポートするかが今後ますます重要な課題となるでしょう。