マンガ市場の20年を振り返る – 新たなトレンド予測と未来像
日本のマンガ市場はこの20年間に多くの変化を経てきました。最近発表された報告によると、NTTソルマーレ株式会社が運営する電子コミックサービス「コミックシーモア」が、20周年を迎えたことを契機に、京都国際マンガミュージアムの学芸員である倉持佳代子氏の監修のもと、マンガ市場の変遷と今後のトレンド分析を実施しました。この分析では、スマートフォンの普及やコロナ禍の影響がマーケットにおける革新の要因となったことが明らかになっています。
1. コミックシーモアとマンガ市場の歩み
「コミックシーモア」は、常に日本の読者のニーズに応える形で様々なマンガを提供してきました。これまでに、時代ごとのライフスタイルや価値観がマンガ市場に影響を与えてきたことは明らかです。
ガラケー時代(2004~2013年): 電子コミック黎明期
ガラケー時代は、電子コミックが初めて普及し始めた時期です。従来の書店では手に入らないジャンルの作品が多く読まれるようになり、官能的な内容や愛憎劇などが人気を集めました。特に『まんがグリム童話 金瓶梅』は、当時のダウンロード数が30万を超えるなど、急成長を見せました。この時代の読者は、周囲の目を気にすることなく個人の携帯で自由にコンテンツを楽しむスタイルを取り入れ、新たな読書体験を手にしました。
倉持氏によれば、「ケータイマンガ」は、紙本では体験できなかった独自の読書体験を提供していました。このことで、マンガ市場は大きな転換期を迎え、以降は読者の多様な嗜好に応じたタイトルが次々に登場することになります。
スマートフォンの普及(2013年~): 市場の本格拡大
2013年以降、スマートフォンの普及に伴って、電子書籍プラットフォームの競争が激化し、より多くのユーザーにアクセスされるようになりました。特に無料試し読みやアプリ連携による課金モデルの浸透により、幅広いジャンルの作品が一般に受け入れられるようになりました。この時期にはアニメ化や映画化された作品がランキングの上位に見られ、さらに縦読みスタイルやボーンデジタル作品が次々と登場しました。
倉持氏は、スマートフォンの浸透が出版社の生態系にも変化をもたらしたと指摘しています。プロのマンガ家として働き始めるための道筋もまた、デジタルプラットフォームの登場によって新たに開かれました。
コロナ禍・アフターコロナ(2020年~): 多様性と需要の拡大
2020年以降、コロナ禍の影響で多くの人々が家で過ごす時間が増えたことで、電子コミックの利用者層が大きく広がりました。特に「鬼滅の刃」のようなヒット作はデジタル購入を促進し、コミックシーモアの売上は劇的に伸びました。また、様々なジャンル作品が登場し、特に異世界ものが人気を集める結果となりました。
倉持氏は、コロナ禍が生じたことで、ぽっかり空いたニッチにジャンルの多様性が根付き、電子コミックが広がる契機となったことを強調しています。
2. 未来のトレンドを読む
20年のデータを元に、「コミックシーモア」は今後の注目ジャンルやトレンドを以下のように分析しています。
自立したヒロインが輝く「ロマンス・ファンタジー」
近年、特に自立したヒロインが主人公となるロマンス・ファンタジーが人気を博しています。読者の半数以上が30代以下で、自らの未来を選ぶヒロインに共感し、憧れを抱く傾向が見られます。ポジティブで自らの人生を切り開くヒロイン像が注目されていることは、現代の価値観を色濃く反映しています。
共感が熱い「夫婦問題・復讐ドラマ」
家庭内での争いや復讐をテーマにした作品も急増しています。特に女性読者から強い支持を受けており、ストーリーがもたらす「スカッと感」が大きな要因です。現代の女性が抱える複雑な感情を反映した作品は、今後も拡大が見込まれます。
社会的制裁をテーマにした青年復讐もの
いじめやパワハラに対抗するスマート復讐ものが、新たな人気ジャンルとして注目を集めています。このスタイルはSNS時代ならではで、共感・爽快感を融合した構成が多くの読者を引きつけています。
倉持氏は、こうした流れが今後も続くと予測し、増加するであろう要素としてAIの影響や海外マンガ文化の浸透にも期待を寄せています。
3. NTTソルマーレと京都国際マンガミュージアム
NTTソルマーレは、豊かな社会づくりに貢献することを目指し、広範な電子書籍の運営やマンガ制作を行っています。さらに京都国際マンガミュージアムは、マンガ資料の収集や文化の保存、さらには調査・研究を行う機関として、マンガ文化の発展を支えています。これらの活動は未来のマンガ界に新たな方向性をもたらし、次世代の読者に対する影響を与え続けることでしょう。