南部ミステリーの最高傑作、ついに翻訳刊行!
今年7月29日、南部ミステリー界の巨匠、ジェイムズ・リー・バークの名作『磔の地』が日本で初めて翻訳されて刊行されます。本作は、1998年に原作がCWAゴールド・ダガー賞を受賞した作品で、邦訳が待ち望まれていました。翻訳は、国内外で多くの作品を手がけてきた翻訳家の吉野弘人氏が担当しています。
バークは、南部の陰鬱な歴史と人間の本質を深く掘り下げる作風で知られています。昨年も『破れざる旗の下に』がアメリカ探偵作家クラブの最優秀長篇賞を受賞し、彼の作品が再評価されています。『磔の地』では、元警官のデイヴ・ロビショーが様々な事件に立ち向かうストーリーが展開され、ハードボイルドなテイストの中で過去の悲劇が現在に影響を及ぼす様子が描かれています。
ストーリーの概要
この物語は、サンセット・リミテッド号の停車駅があるルイジアナ州ニュー・アイビーリアを舞台にしています。元警官であるロビショーのもとに、かつて私刑で父親を磔殺された写真家ミーガンが訪れ、窃盗罪で拘留中の黒人の囚人が看守に虐待されているとの訴えを持ちかけます。ロビショーはこの訴えの真相を追いながら、彼を取り巻くさまざまな悲劇に直面することになります。
物語が進むにつれ、囚人の妻の自殺や、レイプ犯が殺害されるといった事件が続発し、かつての磔殺事件と関連していく様子が描かれます。過去と現在が交錯する中、ロビショーは人間の心理や社会の闇に迫っていくのです。
著者 ジェイムズ・リー・バークの魅力
ジェイムズ・リー・バークは1936年にテキサス州ヒューストンで生まれ、ミズーリ大学で学士号及び修士号を取得後、作家デビューを果たしました。彼の作品は、犯罪小説でありながら文学的な深みを持っており、スティーヴン・キングやエルモア・レナード、マイクル・コナリーといったミステリー界の巨匠たちから高く評価されています。
バークの作品は、犯罪の背後に潜む人間の緊張感や痛みを繊細に描写しており、彼の力強い文章は読者を引き込む魅力にあふれています。『磔の地』も例外ではなく、彼のこれまでの作品と同様に、深い人間ドラマと複雑に絡み合ったストーリーが特徴です。
日本初上陸の意義
本作『磔の地』の邦訳は、バークの作品が日本の読者に初めて紹介されるという意味でも大きな意義があります。彼の作品を通じて、南部ミステリーの奥深さやアメリカ社会の闇を知ることができる機会となることでしょう。
本書は新潮文庫〈海外名作発掘 Hidden Masterpieces〉からの刊行で、定価は1,210円(税込)。ISBNは978-4-10-240981-7です。
みなさんもこの機会に、ジェイムズ・リー・バークの『磔の地』を手に取って、南部の壮絶な悲劇とそれに挑む人間の姿を体験してみてはいかがでしょうか。