「共同体自治」を育む新たな取り組み
競争と排除の時代にあって、共生の社会をどのように形成していくかは、私たち全員にとって重要なテーマです。名古屋を拠点とする特定非営利活動法人・全国こども福祉センターは、この問題に取り組むため、2008年から15年間にわたって公共空間での若者アウトリーチ活動を続けてきました。2026年5月16日、東京大学で開催される刊行記念イベントでは、同センターの取り組みが紹介され、「共同体自治」の可能性について議論されます。
イベントの目的
このイベントは、荒井和樹理事長が執筆した著書『能力社会から共同体自治へ ― 競争と排除を乗り越える教育と福祉実践』の発表を記念するものであり、名古屋における公共空間での実践を背景に、能力や成果で人が評価される社会の中での許容、共生を模索することを目指しています。
当日、本イベントにはコモンの思想家、斎藤幸平氏と哲学者の梶谷真司氏も参加する予定で、福祉、教育、哲学、社会思想の交差点における新たな対話が期待されています。
子どもと若者の現状
近年、子どもや若者に関連する孤立や貧困、不登校、ひきこもり、さらには精神的な生きづらさが社会問題として広く認識されるようになりました。しかしながら、制度や相談窓口が整備されても、アクセスが難しい人々や、「支援」を受けることに抵抗を持つ人々が少なくありません。全国こども福祉センターは、そうした人たちと向き合うため、まずは公共空間での出会いを重視し、関係を構築することから始めました。
この取り組みの核となるのは、子どもや若者を単なる支援対象として捉えるのではなく、彼らと共に未来を創る「仲間」として尊重し、その主体性を引き出していくことです。参加者は、実際に企画や運営に関わり、自らの手で居場所を作り出す経験を経て、支え合う関係を築いてきました。これが「共同体自治」の実践です。
社会に問う「場」とは
イベントでは、能力社会と共同体自治という二つの視点から、どのように「場」を再構築するかが議題に上がります。競争や成果を重視する社会において、私たちは人と人が出会う場をどのように取り戻すことができるのか。それは福祉や教育の現場だけでなく、社会全体が真剣に考えなければならない問題です。
全国こども福祉センターの活動においては、支援を受ける人々と支援者という関係の固定観念を超え、共に場を作り、共生するという挑戦がなされています。このような活動は、社会のあり方や価値観を問い直す大きな一歩となるでしょう。
書籍の内容
『能力社会から共同体自治へ ― 競争と排除を乗り越える教育と福祉実践』では、名古屋での実践をもとに、現代社会の課題を深く掘り下げています。子どもや若者を単なる支援対象から共に活動する仲間として迎え入れ、共に未来を形作る姿勢は、福祉や教育、公共の場の再構築について新たな考察をもたらします。著書の帯文は斎藤幸平氏が担当しています。
全国こども福祉センターとその歩み
全国こども福祉センターは、2012年から名古屋の公共空間を中心に、孤立した子どもや若者が出会える場を提供してきた団体です。年齢や性別、背景に関わらず、誰もが自由に集まれる場所を創造し、活動の企画・運営に参加することから、支援と被支援という関係を超えた新たな共同体の形を実践しています。2023年には第1回「こどもまんなかアワード」で内閣総理大臣表彰を受賞するなど、その取り組みが多くの評価を集めています。
最後に
荒井和樹理事長は、「私たちが大切にしてきたのは、一方的な支援という形ではなく、まず共に居合わせることです」と強調します。互いに出会い、挨拶し、一緒に過ごすことが、現代社会において非常に重要だとされています。このイベントを通じて、福祉や教育の専門領域を超えて、共に生きる場をどう創造するかを考える機会になることが期待されます。