アルス・エレクトロニカで新たな音楽の形を体験
一般社団法人El Sistema Connectが主催する『第九のきせき』が、2025年9月3日から7日まで開催される「アルス・エレクトロニカ・フェスティバル2025」のオープニングでパフォーマンスを披露します。このフェスティバルはオーストリアのリンツで行われ、メディアアートの象徴的なイベントとして世界中から注目を集めています。
『第九のきせき』パフォーマンスとは
『第九のきせき』は、ベートーヴェンの交響曲第9番「歓喜の歌」を手話で表現する「手歌」と、声楽隊が共に奏でるパフォーマンスです。2021年から続けられており、手話と音声が融合した新たな形の音楽体験を提供しています。2025年のフェスティバルでは、ホワイトハンドコーラスNIPPONの芸術監督であるコロンえりかが、リンツ新大聖堂横の野外ステージでLinz Sign Language Choriと共に、3000人の観客を前にこの感動的なパフォーマンスを行います。
エリカさんは、声楽アンサンブルCompany of Musicとともに「欧州の歌(Anthem of Europe)」を披露し、一般の参加者にも古典的な音楽の楽しみ方を提案します。さらに、参加者には手話のワークショップが開催され、白い手袋をつけた大合唱が展開される予定です。
体験型写真展『第九のきせき』
また、フェスティバル期間中には、マリエン大聖堂で体験型写真展『第九のきせき』が実施されます。この写真展は“Visible ‘An die Frede’”というタイトルで、手歌がどのように光の道として表現されるのかをテーマにしています。写真家田頭真理子が手がけたこの作品は、音楽を可視化することで新たな感動をもたらします。田頭さんは、聴覚や視覚に障がいを持つ子どもたちとの関わりからインスピレーションを得て、音楽と写真という異なるアートの融合を試みました。
コロンえりかと田頭真理子の経歴
コロンえりかは、ベネズエラ出身のソプラノ歌手であり、教育学を学んだ後、英国王立音楽院で優秀賞を取得しています。国際的な声楽コンクールでも受賞歴があり、音楽活動に限らず、障がいを持つ子どもたちへの音楽教育にも力を入れています。
一方、田頭真理子は広島県尾道市出身で、フリーランスのフォトグラファーとして多様な分野で活動中です。「第九のきせき」のプロジェクトを通じて、障がいを持つ子どもたちとの交流から新たな表現方法を見出しました。
ホワイトハンドコーラスNIPPONとは
ホワイトハンドコーラスNIPPONは、ろう者や難聴、全盲など、多様なメンバーが集まるインクルーシブな合唱団で、すべての子どもに開かれた音楽教育の機会を提供しています。彼らの活動は、南米ベネズエラで始まった「エルシステマ」の理念に基づいており、誰もが平等に音楽を学ぶことができる環境を作り出しています。これまでに多くの賞を受賞しており、その活動の幅広さは目を見張るものがあります。
2025年の「アルス・エレクトロニカ・フェスティバル」では、『第九のきせき』を通じて、ベートーヴェンの音楽が果たす力を再確認し、感動的な瞬間を世界中の人々と共有することが期待されています。