大阪万博の「いのち動的平衡館」プロデューサーとして知られる福岡伸一が、新著『生命と時間のあいだ』を2023年7月30日に発売しました。この書籍は、著者自身の真骨頂とも言える新たな時間論を展開したものであり、これまで見えていなかった時間のパラドクスを解き明かしています。
福岡伸一は、京都大学を卒業後、ハーバード大学医学部のフェローとしても活動し、後に青山学院大学教授となるなど、幅広い経歴を持つ生物学者です。彼の著作には、生命と無生物、また動的平衡の概念をわかりやすく解説した『生物と無生物のあいだ』や『動的平衡』シリーズなどがあり、今回の新作もその延長線上に位置しています。
本書では、ダ・ヴィンチ、ダーウィン、ガリレオ・ガリレイ、フェルメールなど歴史的な偉人たちの作品に表れる時間の流れを考察し、世界と生命の解像度を一新する試みが行われています。著者は、近代科学の影響で忽略されがちだった時間の捉え方に疑問を呈し、現代におけるその意義を問い直します。
冒頭のまえがきでは、「私たちは今、あらゆることに不審と不満をかかえている」と述べ、政治や経済の問題も生命に対する根本的な向き合い方が定まっていないことが原因であると指摘します。このような視点が本書の思想をより深く読み解くカギとなります。読者は、この新しい時代の時間論に触れることで、思考の幅を広げられるでしょう。
書籍のカバーアートには、万博でも注目を集める落合陽一の作品『アリスの時間』が採用されています。落合作品は、実在しない奇妙な時間を表現したものであり、福岡伸一の思想にどのように寄り添っているかも興味深い点です。
福岡さんは自著の印刷所である精興社の朝霞工場を訪れ、刷り上がったばかりの本を手にした瞬間、喜びを隠せませんでした。この様子は新潮社の『波』8月号に掲載される予定です。
「動的平衡を表現するとどんな物語が生まれるのか。ページをめくってみていただければ嬉しいです」と福岡伸一はコメントしています。この本は、単に読むだけでなく、自らの時間観を再考する旅へと誘うものです。
書籍データは以下の通りです。
- - タイトル:生命と時間のあいだ
- - 著者名:福岡伸一
- - 発売日:7月30日
- - 造本:四六判
- - 定価:1815円(税込)
- - ISBN:978-4-10-332213-9
- - URL:新潮社 学術書籍一覧
この新たな時間論が、私たちに時間の本質を見つめ直す機会を提供することに期待が寄せられています。