文豪ディケンズの名作が新訳で蘇る
2025年6月17日、株式会社KADOKAWAより、ディケンズの名作『新訳 大いなる遺産』が登場します。著者にディケンズ、訳者に東京大学の教授、河合祥一郎氏を迎えたこの翻訳作業は、文庫翻訳史上において特筆すべきイベントです。この新訳では、英文学の巨匠が持つ独特な文体を見事に再現し、原文の魅力を余すことなく伝えています。
この新訳の最大の特徴は、ディケンズ特有の複雑な文体への徹底したこだわりです。文学研究者でもある河合氏は、英語の非常に特殊な表現や、19世紀英語にじっくり向き合い、翻訳に取り組みました。
異様な文体とその魅力
ディケンズの作品には、長い文がいくつも続き、独特のリズムが生まれています。それは長い文の中で多重的な意味を孕む表現が多く、時には『オックスフォード英語辞典』を引かないと理解できないフレーズもあります。この点を踏まえ、河合氏は訳すことを優先させるのではなく、いかにしてディケンズの“らしさ”を表現するかに注力しました。
彼自身も語るように、「翻訳者泣かせ」と称される難解な部分を見事に乗り越え、読者に小説の本質を感じ取ってもらうことに成功しています。例えば名シーンの中にある強烈な皮肉やユーモア。このような要素をしっかりと翻訳に盛り込むことにより、読者はディケンズが意図した楽しさを享受できるように工夫されています。
河合訳の注目ポイント
1.
特殊文体の全訳: 今回の新訳で初めてディケンズの独自の文体を全翻訳しているため、作品のセンスがそのまま伝わります。
2.
ディケンズ流の言葉遊びの再現: 例えば、ディケンズ特有の隠喩や比喩表現を忠実に再現し、原文の豊かさを維持しています。
3.
行間に秘められたロマンス: 重要なラストシーンでは、隠された意図が行間に溢れており、読者に新たな発見をもたらします。
4.
詳細な解説付き: 河合氏は、ディケンズの生い立ちや作品の社会背景などを解説し、読者の理解をより深めます。
5.
没エンディングの掲載: 他訳ではほとんど触れられていない内容を知ることができ、物語の深層に迫ることができます。
作品のあらすじ
『新訳大いなる遺産』では、親のない少年、ピップが主人公です。彼は意地悪な姉に育てられながら、唯一の味方である義兄ジョーと共に生きています。ある晩、ピップは脱獄囚の命を救うことになり、その瞬間から不思議な出来事が連鎖していきます。謎の遺産を受け取り、ロンドンでの紳士修行へと向かう様子は、サスペンスに満ちた展開が待ち受けています。
まとめ
この夏、英文学の最高峰とも言える『大いなる遺産』の新訳は必見です。河合祥一郎氏の手によって、160年前のディケンズの世界がまったく新しい感覚で体感できるチャンスです。読書体験をより豊かにしてくれる本作にぜひ触れてみてください。特に他社の訳と読み比べて、自分だけの解釈を見つける楽しみも味わえます。これからの読書シーズン、是非手に取ってみてはいかがでしょうか。