中野京子が描くメーリアンの生涯
中野京子による新刊『虫を描く女 「昆虫学の先駆」マリア・メーリアンの生涯』が、NHK出版より4月10日に発売されました。この著作は、フンボルトやダーウィンよりも前に独学で昆虫を研究し、彼女の細密で大胆な絵画を通じて昆虫学の道を切り開いた女性、マリア・メーリアンの偉業を深く掘り下げています。
養老孟司氏の推薦
本書は、解剖学者の養老孟司氏にも新たに推薦されており、「日本では未だに広く知られていない先駆者の姿を生き生きと蘇らせている貴重な書」と高く評価されています。中野は、メーリアンの業績を通じて、科学とアートがどのように結びついているのかを明らかにしています。
知られざる時代背景
17世紀の当時、アリストテレスの理論が未だに一般的に信じられていました。彼の説によると、虫は腐敗物から自然に生じるものであり、イモ虫とチョウの関係も理解されていませんでした。そんな時代に、メーリアンはそれまでの常識を覆す勇敢な挑戦を行い、昆虫がメタモルフォーゼ(変態)を経ることを見事に描いてみせました。
彼女の生涯は非常に波乱に富んでおり、カトリックの影響が強い社会の中で、夫と離婚し一人で子どもを育てながら、自立を果たしました。また、彼女は52歳で娘を連れて南米に渡り、2年にわたる調査旅行を敢行しました。このような壮大な冒険は、女性が主体的に活躍することが難しかった当時の社会において、特に目を引くものです。
本書の魅力
本書では、メーリアンが描いた昆虫画の数々をフルカラーの図版で紹介しつつ、その背後にある彼女の情熱と苦悩を描き出しています。第一章から第五章まで、メーリアンの人生の各段階を見事に表現しており、特に彼女の作品を通じて、科学と芸術の交差点を探る点は非常に興味深いものです。
- - 第一章 なぜ小さな虫に神が宿るのか:フランクフルト時代の彼女の幼少期とその影響。
- - 第二章 科学と芸術の幸福な融合:ニュルンベルク時代、メーリアンがどのように芸術と科学を融合させたか。
- - 第三章 繭の中での変化:オランダでの経験が彼女の作品にどのような影響を与えたか。
- - 第四章 悦びの出帆:スリナムでの探検生活の様子。
- - 第五章 不屈の魂:彼女の晩年、アムステルダムでの生き方。
メーリアンの作品には、トケイソウやモルフォチョウなど、彼女が描いた昆虫たちが息づいています。彼女の精密かつ大胆な絵は、ただ美しいだけでなく、当時の科学への挑戦と情熱をも伝えています。
試し読みも実施中
NHK出版デジタルマガジンでは、本書の「はじめに」の全文が特別に公開されています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。
より深く知ることで、新たな視点を得られること間違いなしの一冊。中野京子が手掛けるこの書籍は、彼女の独特の視点で描かれたメーリアンの生涯を通して、私たちに多くの気づきを与えてくれることでしょう。