新潮文庫刊行『中動態の世界 意志と責任の考古学』の登場
本日、3月28日、國分功一郎氏の待望の新刊『中動態の世界 意志と責任の考古学』が新潮文庫より発売されました。この書籍は、すでに累計40万部を突破した話題の哲学書『暇と退屈の倫理学』の著者によるもので、私たちが普段見過ごしている「意志」と「責任」の再考を促します。
中動態とは何か
本書の特徴は、従来の能動と受動という二元論を超えた“中動態”という概念に焦点を当てている点です。著者は、従来の枠組みでは説明できない人間の行動や思考の豊かさに迫ります。“中動態”は、言葉による束縛から解放された新たな理解を促進し、私たちが抱える日常的な不自由さを浮き彫りにします。著者自身は「意志がある方が、変」という逆説的なテーマを通じて、新たな自由の追求を促します。
受賞歴と反響
本書は、2017年に医学書院から刊行され、その際には紀伊國屋じんぶん大賞2018や小林秀雄賞を受賞しました。本書の魅力は、依存症当事者との対話を通じて引き出された考察や哲学的な深みです。しかし、本書は単なる哲学書にとどまらず、現代社会における普遍的なテーマである意志と責任に対する問いを新たに投げかけます。
知識人たちの称賛
著名な映画監督や美学者など、さまざまな分野の知識人からも高く評価されています。映画監督の濱口竜介氏は、中動態を知ることで撮影現場における価値観が変わったと語っています。美学者の伊藤亜紗氏は、特に言語学を超えた哲学の重要性に触れています。これらの声は、本書が単なる学問を超え、幅広い人々に影響を及ぼしていることを示しています。
出版記念イベント
新刊の発売を記念し、著者自身によるトークイベントが行われます。4月30日には代官山の蔦屋書店で行われ、著者との対話を通じて、中動態の概念についてさらに深く探ることができます。伊藤亜紗氏との対談も予定されており、知識人同士の刺激的な議論が期待されます。また、続いて5月9日にはジュンク堂書店池袋本店で書籍関係者とのトークイベントが開催され、著者がどのように本書を執筆したのか、その背景に迫ります。
文庫版の新たな視点
この文庫版では新たに「責任の概念」に関する補遺も収録されています。この部分では、著者が単行本刊行後の多くの対話を通じて得た理解を深め、私たちの日常における責任について新たに論じています。本書は、哲学を書籍として楽しむ層だけでなく、当たり前のように存在する概念に挑戦するすべての人に開かれた一冊です。
結論
『中動態の世界 意志と責任の考古学』は、私たちの思考を広げるための貴重なツールです。この文庫化を機に、多くの読者が“中動態”という新しい視点から世界を見つめ直すことを期待しています。