東大生起業家が描く介護の未来
2025年11月14日、株式会社クロスメディア・パブリッシングから新刊『未来をつくる介護』が発売される。この書籍の著者は、現役東京大学生であり、起業家でもある森山穂貴氏だ。彼は自らの介護現場での経験をもとに、高齢社会に対する新たな視点を提供している。
介護現場のリアルな実態
森山氏は、介護業界の現実をありのままに描くことに注力している。本書では、一般的には「大変」とされがちな介護現場の実態を詳細に解説。彼自身が見た「笑顔」と「課題」の両面を通じて、介護の中に潜む可能性を引き出している。たとえば、高齢者が牛丼の試食会で元気に「汁だく!」と注文する様子や、関西万博での高齢者の逞しい姿を描写することで、介護現場の豊かさを伝えている。
しかし、この美しい物語の裏には、多くの現実的な問題も存在する。膨大な事務作業や、低い給与水準、人間関係の摩耗といった構造的問題が懸念される。本書ではそうした問題に対する解決策も共に考察されている。
CCRCC構想で地域づくり
森山氏は、介護が抱える課題を解決するための新たな提案として「CCRCC(Continuing Caring Retirement Communal City)」という構想を提唱している。このモデルは、既存の地域を壊すことなく、高齢者に優しい町へと変化させるためのアイディアだ。日本の地域特性を踏まえ、介護や医療、生活支援、さらには交流機能を重層的に組み込むことで、住み慣れの地で安心して暮らすための環境を整えることを目指している。
実践的なビジネスモデル
本書には具体的なビジネスモデルも提案されており、介護サービスのM&Aや高齢者向けフィットネスコミュニティ、サブスクリプション型買い物支援事業など、多様な9つのアイデアが盛り込まれている。これにより、高齢者の生活の質を向上させるだけでなく、地域経済の活性化も同時に実現することが目指されている。
日本モデルの国際的な可能性
日本は今後、世界でも最も高齢化が進む国となる。しかし森山氏は、この現状を逆転の発想で捉え、「解決策先進国」としての地位を築くチャンスと見ている。日本の介護技術やノウハウは世界中で注目されており、本書ではその中でも介護ロボットや地域包括ケアシステムの重要性が強調されている。これらの技術は、日本の新たな成長エンジンになり得るのだ。
誰におすすめか
本書は、介護業界で働く人々や高齢者ビジネスに関心がある経営者、自治体関係者、さらには高齢社会に危機感を抱くすべての人にとって必読の一冊だ。森山穂貴氏の視点と提言を通じて、新たな高齢社会の在り方を考えるきっかけになるだろう。
最後に
「未来をつくる介護」は、高齢社会の課題に対する真摯なアプローチと、新たなビジョンを提示する重要な書籍である。この本から生まれる議論やアクションが、未来の介護をより良いものへと変えていくことを期待したい。