スマートフォンに秘められた暗い真実
2025年10月8日、株式会社大和書房から衝撃の新刊『ブラッド・コバルト コンゴ人の血がスマートフォンに変わるまで』が発売される。この本は、シッダルタ・カラ著、夏目大の翻訳によるもので、ピュリッツァー賞の最終候補作として名を馳せた作品だ。本書は、リチウムイオンバッテリーに不可欠なレアメタル「コバルト」の採掘過程を通じ、驚くべき搾取の実態を浮き彫りにしている。
コバルトの暗い現実
コバルトは、私たちが日常的に使用するスマートフォンや電気自動車の製造に欠かせない素材である。しかし、その供給のほとんどを中国が握っており、その背景には驚くべき現実が隠されている。特にコンゴの村では、未だにスマートフォンを見たことがない子どもたちが、シャベル1本でコバルトを掘り続けている。その労働条件は劣悪で、児童労働や人身売買が蔓延り、1日12時間働いても得られる賃金はたったの1ドルに過ぎない。
本書の魅力と影響力
本書は、リアルな証言を交えながら、単なる搾取の歴史を越えて、現代の奴隷労働の実態を鋭く描く。ライムスターの宇多丸や、哲学者の斎藤幸平が本書を高く評価する理由もここにあるだろう。宇多丸は、スマートフォンの裏側に広がる植民地主義や奴隷労働の現実を直視することの重要性を強調し、「知らなかった」では済まされないと警鐘を鳴らしている。また、斎藤は、現代のデジタル資本主義の中で命よりも金が優先される現実を、「21世紀の資本主義と奴隷制」として捉え、本書の重要性を訴えている。
構成と著者のプロフィール
本書は七章で構成され、それぞれがコバルトの歴史や採掘の実態について深く掘り下げている。全456ページというボリュームからもわかるように、著者シッダルタ・カラの徹底したリサーチと情熱が感じられる。
シッダルタ・カラは、現代の奴隷制を研究する作家であり、ノッティンガム大学の准教授でもある。彼の活動は、単なる執筆にとどまらず、現場での活動をも織り交ぜており、彼の著書はすでに三冊出版されている。特に彼の初著作は、映画『トラフィックド』の原作にもなった。彼の取り組みは、読者に現代社会の暗い一面を教えてくれる一方、私たちが何に加担しているのかを考えさせるきっかけとなる。
翻訳を手がけるのは夏目大。彼もまた多くの翻訳書を手掛け、文学における橋渡し役を担ってきた。本書の翻訳を通じ、彼のスキルが活かされ、より多くの読者にこの重要なメッセージを届けることが期待される。
まとめ
『ブラッド・コバルト』は、単なる書籍の枠を超え、現代社会が直面している深刻な問題を浮き彫りにしている。この本を手に取ることで、私たちが日々使うテクノロジーが生み出す現実について、考えさせられることだろう。私たちの生活の延長線上にあるこの問題に、どのように向き合うのか、ぜひ考えてみてほしい。