松家仁之の新作『天使も踏むを畏れるところ』の魅力とは
歴史小説の新たな金字塔が立ち上がりました。松家仁之氏の最新作、長篇小説『天使も踏むを畏れるところ』が話題を集めており、各界から絶賛の声が寄せられています。本作品は、戦後の日本を舞台に、象徴天皇にふさわしい新宮殿の建設プロジェクトを取り上げており、歴史的背景に根ざしたストーリーが多くの読者を引き込んでいます。
戦後日本の復興と新宮殿の設立
小説の背景には、1945年5月の激しい山手空襲によって焼け落ちた明治宮殿の歴史があります。長らく見送られてきた再建が、戦後日本の復興とともにようやく始まるという壮大なテーマが描かれています。
特に、本作では設計士の村井俊輔が中心となり、その周辺の建設技官や宮内庁の面々、さらにはさまざまな視点からこのプロジェクトを描き出しています。単なる歴史的叙述に留まらず、そこには人間ドラマが溢れ、過去と現在をつなぐ深い思索がなされているのが特徴です。
多角的な視点で描かれるストーリー
松家氏は、登場人物の視点を変えながら物語を進行させることに重点を置いています。建築とその周りにある人々の葛藤、情熱、そして彼らが直面する様々な試練が、作品全体に深みを与えています。特に、建築にかける思いが滲み出る一方で、国家との関係性を描くことにより、当時の政治的背景も意識させられる要素が強調されています。
各界の著名人から寄せられた評価
本作は、河西秀哉名古屋大学准教授を始めとした歴史学者や建築専門家からも高く評価されています。河西氏は「フィクションとは思えないほどのリアリティ」を称賛し、登場人物の会話が生命を持っているとその実力を認めています。
また、松隈洋神奈川大学教授は「モダニズムの視線で日本の木造建築を洗練させた」とし、素材の持つ力強さと建物の構造に関する洞察をもって新宮殿の魅力を述べています。
これに加えて、政治学者の御厨貴氏は「読後の満足感に包まれる」と語り、登場人物間の微妙な距離感や緊張関係が生み出すドラマにも高評価を与えています。こうした多くの賛辞が伝えられることで、本書への期待がますます高まっています。
書籍情報と今後の展望
『天使も踏むを畏れるところ』は、552ページの大作でありながらも、その中に詰まった物語は非常に緻密です。著者の松家仁之氏は、本作において国家的プロジェクトの多面的な側面を描ききることで、読者に新たな視点を提供することを目指しています。
彼のデビュー作『火山のふもとで』以来、彼の作品は常に新たな表現を追求し続けています。今後も、彼の作品に注目が集まることでしょう。読者にとって、一度は手に取るべき作品だと言えるでしょう。
書籍詳細
- - タイトル: 天使も踏むを畏れるところ上下
- - 著者: 松家仁之
- - 発売日: 2025年3月26日
- - 定価: 上下各2970円(税込)
- - ISBN: 上 332814-8 下 332815-5
文庫化された『火山のふもとで』も含め、松家仁之氏の作品にぜひ触れてみてください。