自給知足で自然を味わう
自然と共に生きるというテーマは、近年ますます多くの人々にとっての関心事となっています。その中でも、著者わたなべあきひこ氏の新著『自給知足がおもしろい』は、特に印象的な内容で満ちています。この書籍では、自然の恵みを享受するための具体的な知識や技術が紹介されており、まさに実用性と啓発性を兼ね備えています。
著者の移住と新たな出発
わたなべ氏は、1998年に家族とともに山梨と長野の県境にある美しい山里に移住しました。「こんな素敵な場所に住んでしまって大丈夫なのだろうか?」との不安を抱きつつも、彼は都市に住む必要が本当にあるのかを考え、自然がもたらす豊かさを享受する選択をしました。科学技術が進化した現代において、人々が暮らしを見直す時期に来ているのではないかとの思いが、彼の移住を後押ししたのです。
虫草農法で自然と共存
著書の中で強調されているのが、虫や草に助けてもらう“虫草農法”という方法論です。これは人間が生態系の一部として暮らすことを目指しており、自然を無闇に排除するのではなく、むしろその力を借りるアプローチです。この思考に基づき、彼の農園は「虫草農園」と名付けられています。
「自給知足」という言葉は氏が提唱した造語で、自給的な暮らしを基本にしつつも「無理をせず」「足るを知る」ことをモットーとしているのです。この精神に則り、試行錯誤を繰り返し、日々の暮らしの中で得た知識や技術をもとに、「面白そうなこと」を積み重ねていくスタイルが、本書の魅力です。
多彩な活動と豊かな食生活
本書では、野菜、米、麦からキノコ、養蜂まで、自然と共に育む多彩な食材の活用法が詳しく解説されています。著者は自らの手で、米を育て、醸し、味噌や甘酒を作り、パンを焼き、さらに山菜を摘み、蜂蜜を採取するなど、多岐にわたる活動を通じて、四季折々の自然の恵みを堪能しています。
もちろん、すべてが順調にいくわけではありませんが、その経験から得た知識は非常に貴重です。具体的なノウハウの数々が、本書にはギュッと詰まっています。
道具と技術の賢い使い方
また、著者は道具や技術を適度に活用することの重要性も説いています。農業には便利な農具や農機が欠かせませんが、家族単位で運営することを前提とした場合、最新の機械は必ずしも必要ではありません。一時代前の農機を利用し、自分でメンテナンスする方法も紹介されています。これにより、効率と便利さを両立させた暮らしを実現することができるのです。
環境への配慮と未来の選択
燃料代をゼロにする方法として、太陽光発電を活用したクルマの使い方も提案されています。山里のようなアクセスが限られる地域において、コスト削減は生活を豊かにする大きな要素です。
現代社会への問いかけ
わたなべ氏の著書は単なる生活技術の指南にとどまりません。私たちが日常生活の中で何を重視するのか、経済効率優先の社会に対してどう考えるべきか、さまざまな問いが含まれています。現代社会のあり方に少しでも疑問を感じる人々にとっては、非常に刺激的な内容でしょう。
『自給知足がおもしろい』は、自然との共存を目指し、実践を通じて得た原理と知識が凝縮された一冊です。これからの時代に必要な価値観を考える上で、ぜひ手に取ってみてほしいと思います。
商品概要
- - 書名:自給知足がおもしろい
- - 著者:わたなべあきひこ
- - 価格:2420円(税込)
- - 発売日:2025年10月9日
- - 判型:B5
- - ISBN:978-4-651-20543-4
- - 電子版:有り