新作『極北の海獣』が日本で発売決定!
2025年5月7日、株式会社河出書房新社から、イーダ・トゥルペイネンの長編小説『極北の海獣』の日本語版が発売されることが発表されました。本作は、フィンランドからロシア、アラスカにかけての壮大な自然と歴史を背景に展開される物語で、東京都新宿区を拠点とする河出書房新社が取り扱います。特筆すべきは、この作品がヘルシンギン・サノマット文学賞を受賞した点であり、今後、世界28言語での出版が決定していることです。
物語の概要
『極北の海獣』では、絶滅した海獣ステラーカイギュウを中心に、18世紀から19世紀、さらに現代に至るまでの探検家や研究者たちの姿が描かれます。物語は3つのパートに分かれ、それぞれ異なる場所と時代での人々の葛藤が織り成されます。具体的には、1部では1741年のロシア極東カムチャツカ半島、2部では1859年のアラスカ南東部、そして3部では1861年、1950年、2023年のフィンランド・ヘルシンキの設定となっており、各時代の中で自然と人間の関わりが深く探求されています。
著者のイーダ・トゥルペイネンは文学研究者であり、自然科学と文学の交差点に立った視点から本作を執筆しました。彼女の徹底した調査によって、人間が自然に与える影響や種の絶滅についての心情が巧みに描かれています。特に、人間の愚かさや自然の神秘への探求心が、現代に生きる私たちに何を訴えかけるかを考えさせるような洗練された文体に仕上がっています。
女性が主役の物語
『極北の海獣』では、特に第2部と第3部の主役として女性が描かれています。この点も、理系分野で活躍する女性が多い北欧ならではの特徴と言えるでしょう。トゥルペイネンの鋭い視点から描かれる女性たちによる強い生き様は、読み手に深い印象を与えます。
装画とデザイン
日本語版の装画には、画家ミロコマチコによる力強いステラーカイギュウの描き下ろしが採用されています。生き物や自然をダイナミックに描き出す彼女のスタイルは、作品のテーマにも見事にマッチしており、カバーを外した表紙には全身骨格も盛り込まれています。著者からの絶賛も受けているこのデザインは、作品への期待を一層高めるものとなっています。
絶滅文学の新たな金字塔
『極北の海獣』は、単なる絶滅の物語ではなく、人間と自然の深い関係について考察を促す作品です。読者は物語を通じて、絶滅や喪失の意味を再考し、自然との共存について新たな視点を得ることでしょう。川端裕人氏が推薦するように、「絶滅文学の精髄」とも評される本作が、日本の読者にどのように受け入れられるのか、発売が待ち遠しくてなりません。
『極北の海獣』は、272ページの上製本で、税込定価は2,970円(本体価格2,700円)。発売日より前の予約も好評を博しています。自然と歴史、そして人間の心の深い探求が詰まったこの作品を、ぜひ手に取ってみてください。今年の文学界に新たな風を吹き込む一冊となっています。