深水黎一郎のミステリーが再び話題に
ミステリー作品『最後のトリック』が、2025年5月に63刷を達成し、驚異の33万部を突破しました。この作品は、深水黎一郎氏のデビュー作であり、2007年に『ウルチモ・トルッコ』として発表された後、2014年に改題されて河出文庫から刊行されました。これまでに多くのミステリー小説が生まれる中、本作は特に「読者が犯人」というテーマで注目を浴び続けています。
一貫した人気の理由
本書は、単なるミステリー作品を超えた深みを持つ作品です。「究極のトリック」というコンセプトに基づき、読者自身が犯人となる巧妙なストーリー展開が魅力的です。これにより、ただ話を楽しむだけでなく、読者は自らの推理力を試されることになります。その結果、2014年の発売以降も支持が途切れることなく、累計15万部を達成するなど、高い人気を維持しています。
さらに、同書が全国高等学校ビブリオバトルの話題となったことも、その人気を後押ししています。2018年には、遠藤駿介さんが本作を題材にしたスピーチで見事優勝し、会場に笑いを巻き起こしました。このユーモアの効いたスピーチは多くの人に印象を与え、若い世代にも広く読まれるきっかけとなりました。実際、現在に至るまで、10代から20代の購入者層が他のミステリー作品と比較しても高い占有率を見せています。
深水黎一郎へのインタビュー
重版を記念して、著者の深水黎一郎氏にインタビューを行いました。
の深水氏は、長期間にわたり支持され続けていることについて「普段あまり本を読まない人も手に取ってくれることが多いと聞き、とても嬉しく思います」と語ります。また、彼は独特のテーマ「読者が犯人」を作り出そうとした動機についても触れ、「小学校の時に読んだミステリーの入門書の中に、『読者が犯人であることがミステリー界に残された最後の意外な犯人である』と書いてあり、想像力をかき立てられました。それ以来、どうやってこのテーマを実現するのか考え続けてきました」と実体験を交えながら説明してくれました。
さらに、作品を書き終えた際の気持ちについても語り、「独特の形式だったので、受け入れられるかはかなり不安でした。しかし、達成感もありました」という言葉から、彼の作品への情熱が感じられました。
ミステリー界の新たなスタンダード
本書の再評価を受けて、評論家やファンからも「まれに見る野心作であり傑作」と高く評価されています。日本の推理小説界の巨星である島田荘司氏からも絶賛され、この作品は単なるエンターテイメントにとどまらず、文学作品としても高く評価されています。
深水黎一郎の『最後のトリック』は、ただのミステリー小説を超えて、幅広い世代に新しい読書体験を提供しています。深い思考を導くこの作品を、ぜひ手に取って楽しんでみてはいかがでしょうか。読者が犯人となるその特異な体験は、あなたを新たな物語の世界へと誘うことでしょう。
書誌情報
- - 書名:最後のトリック
- - 著者:深水黎一郎
- - 文庫版解説:島田荘司
- - 発売日:2014年10月7日
- - 最新重版出来日:2025年5月7日
- - 税込定価:803円(本体730円)
- - ISBN:978-4-309-41318-1
- - URL:河出書房新社
深水黎一郎略歴
1963年、山形県生まれ。2007年に『ウルチモ・トルッコ』でメフィスト賞を受賞しデビュー。同作は『最後のトリック』と改題され、長年のベストセラーとなる。2011年には「人間の尊厳と八〇〇メートル」で日本推理作家協会賞を受賞し、その名を広げた作家である。