19世紀の女性観を笑い飛ばすジェンダー絵本
21世紀に生きる私たちにとって、19世紀の女性に関する固定観念は信じ難いものであるが、これを見事に笑い飛ばしているのがジャッキー・フレミングの絵本『問題だらけの女性たち』だ。この書籍は2025年5月8日に河出文庫として文庫化される。
繊細なユーモアと皮肉で描く歴史
本書では、フレミングが様々な迷信や偏見に立ち向かい、歴史が女性たちに対していかに不公正であったかを皮肉たっぷりに語っている。例えば、「かつて女の脳はスポンジでできていた」といった信じ難い観念や、「自転車に乗ると貞操を失う」といった迷信が、19世紀の女性にいかに影響を与えたのかが明らかにされている。
女性たちの存在を照らし出す
フレミングは、自身のユーモアを巧みに使い、見落とされがちな女性たちの存在に光を当てている。知識や権利が制限されていた時代に、どう女性たちが扱われてきたのか、またその構造が今も続いていることを、歴史的視点から批評している。このアプローチは、現代の価値観に照らし合わせながら当時の不条理を浮き彫りにする。
社会に向けた強いメッセージ
訳者の松田青子氏は、「歴史の授業で女性の偉人について習わないのはなぜか?」と問うフレミングに共鳴し、本書の重要性を語っている。そして、私たちが歴史をどう受け止め、どのように批評に昇華させていくかが、今後の社会の在り方に大きく影響するというメッセージを届けている。
受け継がれるメッセージ
『問題だらけの女性たち』は単なる過去の批判に留まらず、現代にも通じるメッセージを持っている。固定観念に対する抵抗を描き出し、歴史的な枠組みから抜け出す力を私たちに提供してくれる。今もなお、「やばさ」が息づく社会の中で、フレミングのユーモアは多くの読者に新たな視点を提供してくれるだろう。
発売情報と今後の展望
本書は2018年に小社より単行本として刊行され、その後も多くのメディアで取り上げられ大きな話題を呼んだ。文庫版は、装幀に名久井直子氏を迎え、税込価格990円で販売される。電子版も予定されており、さらなる多くの人々にこの強いメッセージが届くことが期待されている。
最後に
『問題だらけの女性たち』は、単に過去の偏見を笑い飛ばすだけでなく、今の私たちに必要な批評の視点を提供してくれる一冊だ。ジェンダーを超えた幅広い人々が、フレミングのユーモアに触れることで、自らの歴史を見つめ直すきっかけとなるだろう。文庫化を機に、この問題作を手に取ることをお勧めしたい。