まつもと市民芸術館で新たなチェーホフ作品『チェーホフを待ちながら』が開幕！

まつもと市民芸術館プロデュース『チェーホフを待ちながら』開幕

2025年11月6日（木）、まつもと市民芸術館小ホールで新たにプロデュースされた『チェーホフを待ちながら』が華々しく幕を開けます。この作品は、劇団「MONO」の土田英生氏が手がけたもので、アントン・チェーホフの作品を大胆に潤色しています。ゲネプロの模様が届き、多くの観客を楽しませる様子が印象的でした。

チェーホフの魅力を軽やかに表現

アントン・チェーホフは、ロシアを代表する劇作家であり、その作品は時に難解とされがちですが、本作は新たな視点から彼のユーモアを引き出しています。特に、彼が愛したとされる“ヴォードビル”の要素を取り入れた一幕喜劇として、観客に親しみやすい内容に仕上げられています。

本作では、広場に集結した5人の男女が、誰かを待っているところから物語がスタートします。それぞれのキャラクターには不安やイライラが見え隠れし、会話には少しの棘が感じられます。そんな中、ある男の登場により物語は急速に展開していきます。この不条理な会話の連なりは、観客を一瞬にして物語の世界に引き込むことに成功しました。

笑いの中の人間模様

物語が進行する中で、5人の男女は登場した男が待ち人だと勘違いしますが、実はその名は「ゴドー」。彼が言うには「チェーホフになれるよう努力する」とのことから、5人はチェーホフについて語り合うことになります。こうした展開の中、チェーホフの初期作品『熊』『煙草の害について』『結婚申込』『余儀なく悲劇役者』が新たに潤色され、観客への笑いを誘います。

特に、山内圭哉氏による独演のパートが圧巻で、ある男が講演中に話がどんどん逸れ、果てには妻の悪口に繋がるというストーリーは観客を惹きつけました。彼の独特の演技力によって、普段は見過ごされがちな人間の本質を笑いに変える様子は見逃せません。

千葉雅子氏と武居卓氏が演じる男女の微妙な心理描写も印象的で、互いに言い合いながらも恋心が芽生えていく過程がユーモラスに描かれていました。また、千葉氏と新谷真弓氏によるコント的なやりとりも多くの笑いを生み出し、全体を通じて異なるスタイルを楽しめるように工夫されています。

誰もが楽しめる作品に

チェーホフの作品が一般的に難解であるとの印象を覆すように、土田氏の手によって生み出されたこの『チェーホフを待ちながら』は、笑いあり、ユーモアありで、誰でも楽しめる内容となっています。風変わりなチェーホフの魅力をふんだんに取り入れた本作は、一度観劇すればその楽しさにクセになること間違いなしです。

本公演は、まつもと市民芸術館小ホールでの松本公演の後、KAAT神奈川芸術劇場でも上演されます。ぜひ劇場でその世界観を体感してください。