大日本印刷が描く未来の出版流通プラットフォームとは
2025年2月、大日本印刷株式会社(DNP)が「未来の出版流通プラットフォーム」の構築を始めることが発表されました。この新しいプラットフォームの狙いは、書店が選ぶ「売りたい本」を手にするチャンスを広げ、書店起点のキャンペーンを展開することによって本の流通を音声化し、さらには出版文化の活性化を図ることです。
書店活性化のための鍵
日本の出版業界は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れや低い粗利率、返品率の高さなど、さまざまな課題に直面しています。これを受け、大日本印刷は2024年7月に社内組織を立ち上げ、出版関連事業の未来を探るための検討を行いました。そこから生まれたのが、書店が独自に発注・販売し、利益を得る仕組みを提供する「未来の出版流通プラットフォーム」です。
具体的な取り組み
このプラットフォームの第一弾は、DNP復刊支援サービスの提供です。2025年5月1日からは、特に注目される文庫本の復刊を行い、複数の書店で販売されます。これにより、名作文庫と再び出会うチャンスが提供されます。
プラットフォームの特徴
1. 書誌データの集約と一元管理
DNPは、出版社からの書誌データを集め、プラットフォーム上で書店が閲覧できる形でまとめます。これにより、書店は売りたい本をタイムリーに仕入れることが可能となり、過去の名作を掘り起こす機会が生まれます。
2. 書店と出版社のマッチング
書店が売りたい本を選ぶ際、出版社も適切な書店を見つけやすくなります。このシステムを利用すれば、書店起点の価格設定や販促キャンペーンが行いやすくなり、出版社と書店間の連携が強化されます。
3. デジタル製造による柔軟な供給
書店の注文に応じて少部数から製造できるプリント・オン・デマンド(POD)技術を活用し、必要なタイミングで本を納品する環境を整えます。このアプローチにより、書店は売り損じや返品を減らすことができるのです。
復刊支援サービスの特異性
「DNP復刊支援サービス」は重版未定の文庫本を対象とし、書店の需要に応じて復刊します。書店員は、売れると見込む本を見つけるためにDNPから提供されるデータを利用し、少部数印刷を行います。この仕組みにより、書店は独占的に特定の本を販売できる機会を得られ、その本が重版された際には出版社からインセンティブが支払われます。
未来に向けての展望
DNPは、全国の書店や出版社に対してプラットフォームへの参加を呼びかけ、2026年度までに多様な出版物をデータベース化していく計画です。このプロジェクトは書店だけでなく、著者や読者をも巻き込んで本の「つくり方」と「届け方」を変革することを目指しています。
DNPは、出版業界における持続可能な文化を育て、本が読まれ続ける未来を実現するための対話と協働を重視していきます。新たな流通プラットフォームがもたらす変化に期待が高まります。