大門剛明の新作『神都の証人』が直木賞候補に
本日、公益財団法人日本文学振興会から発表された第174回直木三十五賞の候補作に、講談社から大門剛明の新作『神都の証人』が名を連ねました。この作品は、昭和、平成、そして令和の80年にわたって貫かれる少女の決意と男たちの約束を描いており、司法の閉ざされた扉をこじ開けようとするものです。前回ノミネートされた第16回山田風太郎賞でも受賞したことからも、この作品の評価の高さが伺えます。
浮き彫りにされる司法の闇
『神都の証人』は昭和18年、戦時下の「神都」とも呼ばれる伊勢を舞台にしています。物語は、周囲の人々から蔑まれる弁護士、吾妻太一が主人公です。官憲による人権侵害がはびこり、司法が死んだも同然の時代に彼は生き延びなければなりません。そんな中、彼は一人の少女・波子と出会います。波子の父は、一家惨殺事件に関与して死刑判決を受けた囚人であり、彼女は吾妻に「お父ちゃんを助けて」と訴えます。この言葉が、吾妻の運命を大きく変えるのです。
決断の先にある長い戦い
吾妻は波子の父を救うため、無罪を立証する証拠を探し始めます。しかし、彼の決意は単なる司法の戦いにとどまらず、彼自身も犯罪者として裁かれる覚悟を決めることになります。物語は、司法の闇に挑む彼の長い戦いを描いており、これがどのように展開していくのか非常に興味深いです。
推奨コメントから見る作品の評価
この作品に寄せられた推薦コメントも、作品の魅力を如実に伝えています。著名な作家たちが口を揃えて称賛する中、朝井まかては「再審の『開かずの扉』が生む不条理。抗う者たちの、魂の人間ドラマ」と表現しました。桜木紫乃は「見てきたように景色と人を思い出せる」と語り、堀川惠子は「生きるということは、かくも哀しく美しいものか」とその重みを感じ取っています。特に五十嵐律人が「時代を超えて受け継がれる法律家の矜持に心が震えた」と述べた点は、作品が時代を超える普遍的なテーマを持つことを示唆しています。
著者大門剛明について
著者の大門剛明は、1974年に三重県で生まれました。彼は龍谷大学文学部を卒業した後、2009年に「ディオニソス死すべし」で横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞を受賞しデビューを果たしました。その後も「反撃のスイッチ」「告解者」など、多くの著作を発表し、映像化された作品も多数あります。また、来年2024年には『完全無罪』がWOWOWでドラマ化が決定しています。彼の作品は、常に社会の普遍的なテーマと人間ドラマを絡めて描かれるため、多くの読者に支持されています。
書誌情報
『神都の証人』は2025年7月2日に発売予定で、ISBNは9784065391594、判型は四六変型、定価は2,585円(本体2,350円)となっております。ページ数は512ページで、内容の詳細な制作とともに、通常の書店でも取り扱われる見込みです。これからの展開に目が離せない一冊になることでしょう。