日本型組織の崩壊と再生
日本社会において、近年、多くの著名な組織が崩壊の危機に直面しています。その一因を探るべく、太田肇氏の新著『日本型組織のドミノ崩壊はなぜ始まったか』が出版されます。本書は、15年以上にわたる組織論の研究成果をもとに、日本型組織の崩壊の経緯とその背景を詳しく掘り下げていきます。
崩壊の始まり
昨今、旧ジャニーズ事務所における深刻な性加害問題、ダイハツ工業の認証試験不正、さらにはビッグモーターの創業者一族によるパワハラ問題や不正請求といった企業ぐるみの不祥事が報じられています。これらの出来事に加え、自民党内部の裏金問題や宝塚歌劇団、大相撲の組織内でのパワハラ、さらには日大アメフト部の廃止など、日本の数多くの組織が抱える共通の問題に対するフジテレビの対応の鈍さも、深刻な社会問題化を招いています。
著者は、これらの組織が「目的集団」であると同時に「共同体」としての機能を果たしていたために、問題が一層深刻化したと指摘しています。この観点から、組織の崩壊が日本の構造的な問題であることが明らかになります。
組織崩壊の根本的要因
第1章では、2023年における支配構造としての「絶対君主型」や「官僚制型」、さらには「伝統墨守型」の組織が例示され、各組織の崩壊の経緯が示されます。ジャニーズやビッグモーターといった現代の著名企業から、伝統ある宝塚歌劇団や大相撲など、広範囲にわたって分析されています。
共同体としての機能喪失
第2章においては、かつては完璧に機能していた日本型組織がどのように「もの言わぬ集団」に変わってしまったのか、原因を探ります。メンバーの内面的な動機や、組織内での力関係に焦点を当て、集団が自己崩壊へと向かう様相を明らかにします。
身近な組織への影響
さらに、第3章では、PTAや町内会などの身近な組織がどのように危機を迎えているのかを取り上げ、特に「ホワイト離職」が崩壊の前兆である場合があることについて言及されています。学校や家庭といった基本的な単位が、今後の組織体制にどう影響するのかも考察されます。
「新生」の時代に向けて
最後に第4章では、組織の「再生」ではなく「新生」が求められる時代にどのように対応すべきかを提言します。デジタル化の進展が組織の形をどう変えるか、「共同体」から「コミュニティ」へ移行していくことが求められると述べています。
日本の未来を考える
本書を通じて、著者は日本型組織の崩壊とその再生に向けたヒントを提供しています。太田肇氏の豊富な知識と独自の観点により、日本の未来を考える上で欠かせない一冊と言えるでしょう。読者の皆様には、是非手に取っていただき、各自の組織やコミュニティに活かしていただきたい一冊です。
書籍詳細
- - 著者: 太田肇
- - 発売日: 2025年3月17日(月)
- - 価格: 1,012円(税込)
- - 判型: 新書判
- - ページ数: 224
- - ISBN: 978-4-08-721354-6
本書は、集英社新書から発刊され、25周年を迎えるレーベルの新たな挑戦とも言えます。幅広い世代にとって手に取りやすい実用書として、日本の未来を考えるための貴重な情報が詰まっています。