冬の寒さが身にしみるこの季節、おふとんの中でぬくぬくしながら、心躍る物語の世界に浸りたいと思いませんか?そんな願いを叶えてくれるのが、2025年12月12日に竹書房から刊行されるキム・イファンの短篇集『おふとんの外は危険』です。著者自身もレイ・ブラッドベリの作品に感銘を受け、作家としての道を歩み始めたという異色の経歴を持つ彼が贈る新作には、独特のユーモアや緊張感が詰め込まれています。
この本に収められている短篇は、さまざまなジャンルを横断しつつも、共通したテーマを持っています。特に注目したいのが、表題作「おふとんの外は危険」です。これは、何ともユニークな発想から生まれた物語で、ふとんや紙コップと会話をすることができるという設定が印象的です。読者を不思議な世界へと誘い込み、その中でさまざまな思索を促してくれます。
また、進化したSiriが登場する「Siriとの火曜日」や、マクドナルドで宇宙の終末についての知識を得る研究者を描いた「万物の理論」なども、興味深いストーリーです。特に、未来社会が抱える整形に焦点を当てた「君の変身」では、理想的な姿を求める人々の心情がリアルに描かれています。また、「透明ネコは最高だった」というタイトルも、心を温めるような愛らしい物語となっています。
これらの作品の魅力は、読後感にあります。「この物語の続きはどうなるのか?」という疑問や、「登場人物の選択は正しい道だったのか?」といった思考を促す余白が残されているのです。そんな巧妙な仕掛けは、同じくサラ・ピンスカーの作品に似た風合いを持っており、読者を深い思索へと導いてくれます。
さらに、ユーモラスな作品は軽やかな楽しさを提供してくれている一方で、現代社会が抱える様々な問題を冷静に描いている点にも注目です。「セックスのないポルノ」のように、無性愛について深く探求した作品も収められており、多様な視点が楽しめます。
この冬に、おふとんにくるまりながら楽しむのにぴったりな一冊。キム・イファンの独特な世界観を堪能できる『おふとんの外は危険』、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
書誌情報
- - タイトル: 『おふとんの外は危険』
- - 著者: キム・イファン
- - 訳者: 関谷敦子
- - 発売日: 2025年12月12日
- - 仕様: 文庫/304ページ
- - 予価: 1,600円+税
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作家情報
- - キム・イファン: 小説家として異なるジャンルを自在に行き来し、多彩な作品を生み出しています。受賞歴も多く、特に短篇が高く評価されています。
- - 関谷敦子: 英国留学を経て韓国語に魅了され、字幕翻訳を中心に活動しています。彼女の翻訳作業にも期待が寄せられています。