伊与原新の直木賞受賞第一作『翠雨の人』がついに発売！

伊与原新の新刊『翠雨の人』が発売！

本日、7月30日、直木賞受賞作家の伊与原新さんによる最新作『翠雨の人』が新潮社から刊行されました。この作品は、実在の女性科学者である猿橋勝子の生涯を描いたもので、読者に感動を与えることでしょう。

伊与原新さんは、今年の1月に『藍を継ぐ海』で直木賞を受賞した著者です。その新たな挑戦として、今回は特に女性科学者の人生に焦点を当てた物語を書き上げました。彼女の情熱と努力を追ったこの作品は、戦中戦後の tumultuous 時代背景の中で、科学への献身を貫いた女性の物語となっています。

物語は、紫陽花と雨を愛する少女が、将来の科学者へと成長する過程から始まります。「雨とは何か、なぜ降るのか？」という素朴な疑問を持つ少女は、世界的な科学者キュリー夫人に憧れ、高等女学校を卒業後、親の勧めで生命保険会社に就職します。しかし、彼女の内なる探究心は抑えきれず、1941年に新たに設立された帝国女子理学専門学校に進学し、第一期生として学びます。

在学中には、彼女の人生に大きな影響を与える師匠、三宅泰雄に出会います。戦時下に置かれた猿橋勝子の選択は決して容易ではありませんでした。中央気象台での職務を通じて科学と戦争に伴う倫理的葛藤に悩まされながらも、彼女は「戦争のための研究はしたくない」という強い信念を貫きました。

戦後は、ビキニ水爆実験に伴う放射能汚染の実態を解明し、その成果は後の核実験抑止にも寄与しました。さらに後年には「猿橋賞」を設立し、現代の女性科学者の育成に尽力する姿勢も描かれています。

この物語は、戦後80年の節目に、様々な社会情勢に翻弄されながらも、「人類を幸せにすること」という科学の目的に忠実に研究に打ち込んだ女性の情熱の物語です。伊与原新の深い思いが込められた一冊をぜひ手に取っていただきたいと思います。

猿橋勝子とは？

猿橋勝子（さるはし・かつこ）は1920年東京生まれ。学校教育において初めての理系女性専用の環境を得た彼女は、東京府立第六高等女学校を経て、帝国女子理学専門学校を第1回生として卒業しました。
研究者としての名声は、1954年のビキニ水爆実験の際に降り注いだ放射性物質「死の灰」の分析によって確立され、その研究成果は世界に広く知られることとなりました。1980年には「女性科学者に明るい未来を」との思いで「猿橋賞」を創設した彼女の業績は、今も多くの女性科学者に影響を与え続けています。2007年に逝去するまで、その情熱は色褪せることがありませんでした。

この作品が、未来を担う若い世代にとって、科学の美しさや力を伝えるきっかけとなることを願ってやみません。ぜひお手に取って、彼女の情熱を感じてみてください。